優等生のSaGa


エレノア「アレ?」
本屋でエレノアが目に留めた少女。
赤みがかった髪を腰の辺りまで伸ばし、着ている服はちらほらこの辺りで見かける
恐らくは大学でのどこかの学部の制服だろう、何やらデザインが似通っている。
如何してエレノアがその少女に目を留めたかと言えば、エレノアが、彼女から漂う
オーラのような物を感知したからである。
向こうも、読んでいた本から目を離し、エレノアのほうに向きかえる。
シェリル「?」
少女は猫目で小生意気そうな顔の作りをしていたが、誰もが振り返る美人だった。
すると、少女がエレノアとシェリルのほうに歩みを寄せる。
近くにくると、その顔の端麗さがさらによく分かる。
エレノアとシェリルと並ぶと、男子にとっては是以上ない景観だろう。
少女「あなた・・・学生じゃないの?」
エレノアの姿をまじまじと見つめてはなった第一声がそれだった。
エレノア「は?」
少女「いや・・・あたしと同じ匂いがしたから・・・」
声も鈴のなるような声だったが、何処かひねくれていてやはり生意気な感を与える。とはいえ、
人を不快にする物ではない。
エレノア「同感ね。私も、あなたから同じにおいを感じたわ。」
そう言ってにやり、と笑う二人の領域は、全くシェリルには理解しがたい物だった。


マリア「あたしはマリアって言うんだ。フォーファー大学の生徒だよ。」
大学の茶店でお茶する事になった。
マリアはショートケーキが好きらしい。
マリア「まあ、ちょっとした有名人よ。」
自分で言うのもなんだが、とは付け足さなかった。
マリア「あなた達、どっから来たの?」
マリアの目は透き通っていて、明るい。
濁りがない目だ。
エレノア「遠い遠い、誰も知らない世界からよ。」
冗談めいてエレノアは言う。案の定、マリアは冗談と取り、笑った。
マリア「へぇ、あたしも行って見たいわ、その場所。」
今度は、少し本気で。
エレノア「・・・そうする?」
今度は、面食らう。
マリア「・・・へ?」
エレノア「まあ、そんな事はどうでも言いとして・・・
     マリア、あなた、もしかして・・・」
エレノアが、自分と同じオーラを感じるこの少女は、間違いなく・・・
エレノア「天才なんじゃない?」
シェリルが隣でわざとらしいため息をつくが、エレノアは気にもとめない。
マリア「・・・やっぱり、わかる人にはわかるか・・・」
その口調は天才と言う言葉を肯定してはいたが、何処か自嘲めいている感が在る。
いや、虚しさと言えば良いのか。
マリア「あたしは待ってたんだ、自分をわかってくれる人をさ。
    周りで、あたしの言う事なんか誰もわかっちゃくれない。
    見てるのは、成績だけ。大学のテストの成績だけ。
    あんなの嘘で固められた使えない似非知識にしか過ぎないのに。」
エレノア「・・・続けて」
マリア「この前、あたしが論文を提出したんだ。内容は・・・少し言えない。
    論理も根拠も完璧だった。でも・・・
    誰も、理解してくれなかった。それどころか、教授に散々叩かれてさ。
    論文も全て焼かれたんだ。
    それに、今の大学で教えてる事は嘘が多すぎる。それをあたしが指摘し
    ても、誰もわからない、わからないから叩かれる。
    もう疲れてた。だから、あたしは嘘の知識でも、他人よりできる事を
    示さなきゃいけなかった。」
エレノア(・・・いけなかった?何か、義務感を感じるわね?)
マリア「・・・ねえ、あなた、名前は?」
エレノア「エレノアよ。」
マリア「・・・エレノア、あたしの家に来て、見てもらいたい物があるの。」
08/05/2001