瞬く間に、乱闘が始まった。 男「うげっ!」 そして、男たちが吹っ飛んでいく様。 実に滑稽だ。 その騒ぎの原因は、エレン。 エレン「全く・・・誰に声をかけてると思ってるのよ!」 栗の髪を靡かせて海賊の屈強な男たちをなぎ倒す少女の姿は、いたく美しく、 コウメイは一瞬ならずとも目を奪われた。 エレンは今はIRPOの制服を着ていない。 何時の間にか、当りの雰囲気はすっかりエレンに味方している。 元々の原因をコウメイは知りたいところだったが、こんな状況の中聞き出せるわけもなし、 又聞いたところで聞こえはしない。 吹っ飛ばされても向かってくる海賊達。 投げ飛ばし、殴り飛ばし、蹴り飛ばすエレン。 もはやお祭り騒ぎだ。 海賊「くっ!何だこの女、馬鹿力じゃねぇか!」 エレン「馬鹿力言うな!」 腕の組合になってなお、エレンの力が海賊を凌駕する。 少女の細腕が、鍛えられた海賊の太い腕をあっさりと上回る。 海の男は屈強で有名なのだ。だからこそ、武装商船団は一つの軍隊としても 高い戦闘力を持ち合わせているのだ。 しかし、その男たち数人を相手に、全く余裕の少女。 コウメイでなくとも、その少女の存在に首をひねる。 果たして、いったいどのような人物なのか? 周囲の喧騒もクライマックスを迎え、男たちがとうとうプライドを捨て集団で 少女に踊りかかる。 後ろから羽交い締めにし、上からと両側から襲い掛かる。 エレン「頭をつかってもさぁ・・・」 驚く事にエレンはあっさりと羽交い締めをはずし、背後の男を力で無理やり持ち上げて楯にする。 海賊「何ィ!?」 勢いのついた海賊は仲間にぶつかる事をとめられなかった。 結果・・・ エレン「まあ、こんな物ね・・・」 エレンにとっては今の喧嘩など手垢がつけられた程度の物なのだろう。 息切れすらしていない。 うわぁぁぁぁ!と辺りの熱狂が増す。 祭りの始まり・・・になるかとした矢先、向こうで何やら違った雰囲気のざわめきが起こる。 男の声「首領だ・・・」 徐々に、ざわめきも大きくなる。 エレン「首領・・・ああ、海賊の・・・」 どうやら、コウメイと同じくこの少女も首領に用が在るようだった。 もしかしたら、この騒ぎも首領世呼び込むことが目的だったのかもしれない。 だとしたら。 コウメイの胸は宝石を見つけたようにときめいた。 |
08/05/2001 |