役割のSaGa


アニーの剣の一撃は、ジュエルビーストの皮膚を切り裂く。
しかし、驚くほどの手応えの無さ。
アニー「どういう事!?」
悪魔の体からは体液が吹き出ている。しかし、ダメージがあるようには見えない。
宝石が一つ輝く。
アニー「!?」
すると、傷は無かったかのように塞がってしまう。
グスタフ「くっ!」
ファイアブランドの炎が、全くこの悪魔には通用しない。
クローディアの水も、ネメシスの稲妻も。
ジュエル「・・・この程度か?」
悪魔がしっぽを振ると、アニーの体が空高く投げ出される!
アニー「きゃぁ!」
地面に叩きつけられる。全身の骨がばらばらになったような衝撃。
クローディアが癒しの水を施す。
アニー「集中攻撃よ・・・あたしが全力でヤツの懐に一撃をいれるから、そこに
グスタフとクローディアが別々の攻撃で、それで怯んだ隙にネメシスの稲妻。
ナタリーは、脇から私の援護を頼むわ。
通用するとは思えなかったが、それしかすることは無い。
ナタリー「・・・わかった。」
集中攻撃の中にいれてもらえる・・・そう、例え、直接攻撃に交わらなくても、
戦闘に於いて役割がある。
それだけで、ナタリーは喜びを感じる。
そう、こんな事は初めてバーバラに歌で誉められた時以来だったか。
このメンバーにおいて、自分は最初は役立たずどころか 単に足をひっぱる存在でしかなかったのに。
ナタリー「・・・頼んだわよ・・・」
ネメシスは、この時僅かだが嫌な予感がした。

今のアバロンを支えている指導者は、選挙で決められた凡庸な男だった。
自分では何もない事はわかっていた。アバロンと言う大国の頂点に立っているなど、 そんな大それたこと考えた事は無かった。
ただ、そんな役回りだと・・・
自分はただのお飾りなのだ。他にも、代りはいくらでもいる。
とりえと言えば、昔鍛えた筋肉質の体だけ。
でも、それでも昔のあだ名はそんな体に似合わない愚鈍さを形容された、「のろまのトータス」。
そして、今はアバロンの一大事。
そんな時に自分は何も出来ない。
コウメイ「そうですね、あなたがそんな考えだからこんな戦争になるんですよ」
背後から突然声が聞こえる。
トータス「だれだ?」
コウメイ「私は軍師・・・いえ、政治秘書に新しく任命されたコウメイという
     者ですよ。」
サングラスの中から光る眼光は、今までの秘書とは明らかに違った野心を秘めて
いる。
トータス「秘書?俺の代りにそれならばこの国を導けばいいのに・・・」
コウメイ「残念ですが、私はシャイで、人を引っ張っていく力はないのです。
     ただ・・・あなたを、最高の政治家にする事なら、簡単に出来ます
     けれどね。」
トーラス「そんな事・・・俺は、ただ人に担がれてここまで着ただけだ。」
コウメイ「担がれなかった人よりはいいでしょう。
     まあ、あなたに自信があろうと無かろうと、私は『ある人』の代りに
     あなたを一人前にしなくては行けませんからね・・・」
トーラス「ある人?」
コウメイ「・・・取り敢えず、普通の人より人望がある。
     それだけで、十分ですから。」
目の前の男がそう言うと、何故だかそう思ってしまう。
この男は、人の心をつかむ術を知っているのではない。雰囲気で、感覚で、
なんとなく・・・才能だ。トップを奮い立たせる、才能だ。
トーラス「・・・俺でも、恥ずかしくないのか?」
コウメイは声に出さず、答える。
コウメイ「取り敢えず、まずするべき事は、おさらいですね。」
口元には笑みがこぼれいている。
コウメイの底知れぬ威圧感と、そして才能にトーラスはいよいよその気が起きてきたのだ。
08/02/2001