軍師の証のSaGa


ここは、カンバーランド。
ゲオルグ「アバロンはどうなっている?」
兵士「はっ・・・やはり、未だに強大な軍事力を抱えているようで・・・」
ゲオルグ「くっ・・・あの国が、全てをぶち壊そうとしているのだぞ!」

カンバーランドと武装商船団の連合と、アバロンとの戦争は最早目に見えた結果が 待つのみだった。
結果として、ゲオルグと言う軍事にかけての天才を抱えるカンバーランド側と
皇帝と言う強大なカリスマを失って久しいアバロンとでは勝負にならない。
そんな折、アバロン帝国大学では。
コウメイ「・・・私は、この戦争で軍師役を引き受けるつもりはありません。」
何度も、帝国の兵士・・・かつてのインペリアルガード、皇帝を守る親衛隊であった名残の 騎士団の一人が、大天才と呼ばれるものの元へと駆けつけていた。
コウメイ「共和国の同盟が破棄されたうちには、アバロンがここまでの軍隊を
     隠し持っていた事もあるんじゃないですか。」
最もである。
アバロンは帝国から共和国へと変わるとき、武力を破棄した形になっていたはずである。 それで、同盟が生まれていたはずだったのだ。
ワレン「しかしっ!何処の国もそれは口上約束だけで・・・っ!」
隊長のワレンシュタインが声を荒げる。
今年で彼はもう齢60にも上る。
彼は、数少ない人々の一人だった。
嘗ての、皇帝陛下を知るものの。
あの時、自分はまだ年端の行かないガキだったが・・・
あの頃に見たあの輝かしい勇姿を、ワレンシュタインは忘れられない。
コウメイ「・・・我々の軍隊には、統率力が無いです。
     私は策を練るのは簡単ですが、人々を導く事は出来ません。
     あなたも、その点においては同じです。
     今のアバロンのリーダーは仮の者。ただの代表者。
     発言力があると入っても、実質のリーダーはカンバーランドの
     トーマ15世が握っているはずです。
     非があるのは、我々ですよ。」
冷静に、戦力分析を重ねるにつれ、ワレンシュタインもこの絶望的な状況を
理解していた。
麗しの都アバロンが、焼け野原になるであろう事も。
だからこそ、軍事力を隠し、もしもの時に供えていたのだが・・・
そのもしもが、もしもの供えの為に引き起こされたのだ。
悔やみきれない。
ワレン「・・・それでも・・・私は、この麗しの都を守りたいのだ!
    あの、皇帝陛下が愛したこの街を!」
既に、30前の人々に皇帝陛下の記憶は無い。
最終皇帝自身が、自分の事を抹消したのだ。
全ての人々に、自分の存在を語り継ぐな。それが、歴代で最も美しく、統率力に
長け、知性、武力共に続くものが無かった、最強最後の皇帝、ミレイユの最後の
命令だったのだから。
その禁じられた存在を、ワレンシュタインはここに曝露した。
それが、死罪に当たる事はわかっていても。
コウメイは、皇帝の存在を知るはずが無い存在であった。
彼は未だ若干20の若者なのだ。
コウメイ「・・・伝説の、皇帝陛下ですか・・・」
しかし、彼の家系は隠しとおし、守り通し、後世に敢えてその存在を伝えた。
一子相伝で。
それは、彼らが天才家系であると共に、そのあまりに秀ですぎて異端とされていた
彼らの頭脳を必要とし、それを役立ててくれた、自分達の存在意義を与えてくれた
皇帝の存在を、後世に伝える・・・自分達の一族が存在している証を、意義を残す為。
コウメイ「・・・自分の3倍も長生きしているあなたに、頭を下げられるとは。
     ・・・しかし、私自身はこの戦争に介入する気はありません。」
確かに、ワレンシュタインはコウメイの言葉の中に変化を感じた。
しかし、それでもこの男は動こうとしない。
何の為に?
ワレン「・・・キミに聞いたのが間違いだった。
    私はしかし、武人としてこのアバロンを守らなくては行けない。
    それが、勝ち目の無い戦いであっても・・・」
ワレンシュタインはコウメイに背を向け、部屋から出ようとする。
しかし、コウメイはそれを止めた。
コウメイ「・・・私は、しかし政治的な介入でこの世界情勢を変えるのは可能だと
     思ってるんですけど・・・」
ぴくっ、とワレンシュタインの肩が動く。
コウメイ「私が動くには時間がかかる。せめて、それまでは持ちこたえてください
     。」
どうやら、このコウメイも、皇帝陛下の遺志を継ぐものらしい。
ワレンシュタインは、振りかえらずに、拳を突き上げて見せ、部屋を後にした。
08/02/2001