男「シェーラ?」 朝目を覚まして、何時もこの時間はまだ布団の中にいる少女の姿がない。 男は体を起こし、その辺りを探してみる。 しかし、何処にもその姿はない。
シェーラ、名をシェリルと言う女性を発見したのは、エレノアだった。 エレノア「・・・あのさ・・・」 メイド服姿の、いかにもひ弱そうな少女が、あの恐ろしい地の底の洞窟に、一人横たわっているのだ。 エレノアでなくとも、首を傾げる。 エレノア「何で、こんな物騒な所にこんな美人さんが一人いるわけ?」 プルミエールにもシフにも答えられるわけがなかった。 取り敢えず、危険なので放って置く訳にも行かず、ニ、三度平手で衝撃を与え、目を覚まさせる。 シェリル「う・・・うん・・・」 浅い眠りだったようだ。 シェリル「・・・ここは?」 まだ視界が開けていないのか、焦点の合わない目で彼女は辺りを見まわす。 プル「気が付きました?」 シェリル「・・・???」 ようやくピントが合うと、シェリルは夢を見ている気分であった。 さっき、自分が住み込みで働いていた酒場で眠気に襲われて、
目が醒めると全く知らない、真っ暗な洞窟の中。 瞬間移動したとしか考えられない状況。または・・・夢? シフ「あ、この人・・・」 シフはこの娘の姿を見て、思い当たる節があるようだった。 プル「誰なの?」 シフ「ああ、確か何処だっけな・・・ああ、ノースポイントだか何処だか忘れたけ ど、どっかの酒場の看板娘さ。 あたしは確かそこで酒飲み対決をした事がある。」 エレノア「何処でもやってるじゃないの。」 シフ「まあ、それはそれとしてだな・・・」 シェリルもどうやらシフのことを思い出したようだ。 シェリル「あ、私も思い出しました。 店の酒全部持ってったひとでしょ?」 プルミエールとエレノアがじと目で睨む。 シフ「まあ、そんなこともあったかなぁ・・・」 暗い地の底でほんわかモード炸裂である。 シェリル「所で、ここは何処なの?何で私、ここにいるの?」 エレノア「そりゃ、こっちが訊きたいわね・・・ ここ、ウエストエンドの奥地の地の底よ?」 シェリルは信じられない、と言った表情を浮かべた。 シェリル「・・・」 疑うのは簡単だったが、だからといって彼女にこの状況を打破できるわけではないのを
十分自分自身でシェリルは理解した。 何しろ、日の光の一片もないのだ。 辺りが見渡せるのは、不思議な光を放つ岩、水の反射によるものだ。 シフ「取り敢えず、危ないからあたし達についておいで。このままじゃ、あんた 魔物の餌食だからね。」 シェリルは素直に従う事にした。
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