召雷のSaGa


とにかく、敵が多い。そりゃもう、うんざりするほど。
と言うより、うんざりしていた。
エレノア「あー、もう炎石が切れちゃった!」
アニマを使い尽くし、髪飾りは塵と化す。
周りにあるものは石と水。彼女は火の術を得手としており、 水は使えないわけではなかったがかなり苦手である。
エレノア「音のツールも使うか・・・」
あまりに敵の数が多い。手段を選んでる暇がなかった。
エレノア「仕方ないわね・・・召雷を使うか・・・」
右手を水に沈め、左手に樫の杖ではなく別の、宝玉を生めこんだメイスを翳す。
エレノア「召雷!!!」
太陽の光、ましてや雷など届くはずのない地の底で、激しい稲光が縦横無尽に魔物の群れを切り裂く。 けたたましい音と共に、消滅していく魔物。
エレノア「・・・天雷は、今の私にはまだ使えないけれど・・・
     召雷で、この威力だものね・・・」
召雷の威力は凄まじいのだが、実はその上に更に「天雷」と言う術がある。
天地をひっくり返すほどの激しい稲妻を引き起こし、その光を見た物は例外なく
全て消滅するほどの威力があるという。まさしく、神の雷。
エレノア「プルミエールとシフは大丈夫でしょうね。」

実は、結構危なかったりする。
危なかったのは魔物達ではない。エレノアの召雷だ。
プル「全く、なんてものを使ってくれるのでしょう!」
敵の数が激減したのはいいことなのだが、代りに自らの命をこれ以上ないほどの
危険に晒してしまった。
プル「エレノア様!危ないですわ!」
只でも、金属製の武具を多く纏っている身なのに。
エレノア「ごめん〜!水の術は苦手でね、加減が出来ないのよ〜!!」
遠くからエレノアの声が反響して聞こえる。
プル「シフさんは問題ないと思うのですが・・・」

シフのほうは。プルミエールほどの危険はなかったが、それでも無事とは言いがたかった。 何しろ、稲妻のショックでほんの僅かではあるが岩崩が起きたからである。 丁度、シフのいたところらへんであった。
稲妻を直接食らうよりはマシであったが・・・
シフ「ふー・・・まあ、どっちにせよこの落盤で敵も減ったし、いいことにして
   おくか・・・」
額には、びっしり汗が滲んでいたが。

敵は次から次へと来るわけではない。どうやら一つのフロアにいる数は限られているらしく、 全滅させると後は平気な物だった。
物陰に潜んでいる可能性はないわけではなかったが、そこまで油断するほど3人は軟弱ではない。 安心できる程度でいいのだ。
エレノア「こっちに宝箱があるわね。」
結構、値打ち物などがこの洞窟の宝にはある。
魔物がためこんでいるのか、それとも昔ここに他に来た旅人達が残していったのかは謎であるが。
中に入っていたのは、中々痛そうなトゲトゲのついた篭手だった。
恐らく、殴るためのものだろう。
プル「これは私がつけていいですね?」
他の二人は無言で頷く。
プル「あれ?」
しかし、この武器には重大な欠陥が隠されていたのだった。
07/26/2001