身のこなしのSaGa


なるほど、とドールは半分感心し、半分驚いた。
エレンの身のこなしは、IRPOの実戦パトロールの部隊でも誰一人として 体得していないレベルにあるものであったからだ。
崩れかけた岩山も、バランスの悪い足場も、全て軽々と乗り越えていく。
ドール「これならヒューズが推すわけよね・・・」
恐らく、近接格闘線ならドールは彼女に勝てる見込みなど万に一つも無いだろう。
中距離射撃を交えた闘いでようやく五分か、もしくは多少の分が悪いか。
ドール「全く、ヒューズも厄介な新人を発掘した物だわ。」
負けじと、ドールもエレンについていく。
そのエレンの動きが、ぴたりと止まった。
エレン「・・・先輩。」
岩山の頂点から見下ろした場所には、魔物の姿が。
ドール「魔物か・・・」
別段不思議な事ではなかったが、ただ、妙におかしいところがあった。
それは、魔物の中に、魔物であらざる姿が確認できたからである。
エレン「・・・機械の魔物って、自然発生するんですか?」
ドール「魔物が作り出したって言うには、どうにも出来すぎよね・・・」
つまりは、人間の誰かがここに機械を送り込んでいると言う事だ。
何らかの形で、ワカツが利用されている事は疑い無い事実に思える。
取り敢えず、ドールは手元にあるカメラのシャッターを切る。
ドール「でも、これじゃまだ足りない・・・もう少し、奥に進むわよ。」
エレンは、無言で頷いた。

グレイ「・・・なんだ、ジャンか。」
メルビルの酒場で一人寂しく酒を飲んでいる所に、何者カの気配を感じ、グレイは
振りかえる、その先には、昔のよしみがある男、バファル帝国の親衛隊、ジャン
がいた。
ジャン「久しぶりだな、グレイ。冒険ばかりで捕まらなかったからな。たまには
    共に語りたいと思ってたよ。」
グレイ「気休めは言うな。帝国のほうで何時でも俺の監視はしていたのを俺は
    知っているぞ。」
ジャン「やはり、ばれていたか・・・」
ジャンは微かに笑みを浮かべた。
グレイ「・・・で、一体何の用だ?」
ジャン「やっぱり、わかってるんだな・・・」
グレイ「当たり前だ。お前は昔から隠し事がヘタだったからな。」
ジャン「違いないな・・・
    なら話は早い。ローバーン公が先日死んだのは知っているだろう?」
グレイ「ああ・・・」
ジャン「そのローバーン公の暗殺に関わっている人物が、今モニカ・・・
    ああ、ローバーンにいるあのモニカの元に身を寄せてるんだ。
    で・・・少し、見てくれないか?」
グレイはそれを聞いて、不信な表情を浮かべる。
ジャン「何故、俺が行かなくては行けない?」
ジャン「・・・行けば、わかるよ。
    金なら払うさ。後払いだがね。」
グレイ「後払いだと?」
ジャン「後で、君がいくらでも好きな額を請求すればいい。
    ただ・・・」
グレイ「ただ?」
ジャン「・・・いや、何でも無いよ。取り敢えず、いってみてくれ。」
そう言って、ジャンは席を立ち、酒場から姿を消した。
グレイ「・・・あいつが絡むと、ろくな事になりはしないからな・・・」
口元が、少し緩んでいた。
07/26/2001