懐古のSaGa


マミ「何?」
夜分に呼びだされ、マミはいささか不機嫌そうにレオニードの方を見た。
もう、よい子は寝ている時間である。
レオ「・・・君は、エスパーだろう?」
マミ「!?」
眠気が、一瞬にして飛ぶ。
レオ「驚く必要は無い。私は、『世界』を知るものだ・・・
   君は、わかるのではないか?」
マミ「・・・この世界が元々一つの大きな世界だったって言う話・・・?」
レオ「そうだ、やはり知っていたか。」
マミはつばを飲んだ。
レオ「私は、元々はここに住んでいたものではない・・・
   ここ、と言うのはこの世界、と言う事だ。この世界が出来てからは
   ずっとここにいつづけているがね。」
マミ「・・・じゃあ、あなたはいくら年を重ねているのですか?」
レオ「私自身は600〜800・・・詳しい年月は忘れたがな。
   しかし、私の先代の記憶は全て私の中に鮮明に残っている。
   我々吸血一族は1000年以上生きる事が出切るが・・・世界が一つだった
   のは、そのもっと前の話だからな。私はその時現存していなかったの
   だけれども・・・」
マミ「先代?」
レオ「そうだ・・・私たち吸血一族は人間とは違う。子をなさない。
   しかし・・・その力、魔力、英知、記憶の全てを命を引き換えに伝える
   ことも出来る。」
マミ「・・・」
マミは言葉に詰まった。実際、自分の理解の範疇を超えているのだ。
頭の中が空白になるより仕方ない。
レオニードは構わず続ける。
レオ「エスパーと言うのは、最早人間には存在しない領域になったはずだがな
   ・・・潜在的にその力を持っているものがいないとは言いきれないが、
   生まれ出でてからエスパーとして完全に覚醒しているものは恐らく
   全ての世界において片指で数えるくらいしか存在していないだろう。」
マミ「じゃあ、世界が一つだった時は、エスパーも沢山存在していたの?」
レオ「いや・・・エスパーは元々少数なのだ。
   純血でなくては、エスパーはエスパーの子をなさない。
   隔世遺伝、と言うものは存在するが・・・恐らく、君はその口なのだろう」
レオニードは一度、間を置いた。
レオ「・・・世界があるべき姿に戻ろうとしている。
   それが果たしてよい事なのか悪い事なのか。
   君は、それを導く為に、生まれてきたのかもしれないな・・・
   人間の別の可能性と言うものを、示させてくれるように・・・」
始めて、この時マミにはレオニードの感情の流れを感じた。
このものは、人間に期待しているのだ。そして・・・もとあった世界を、 忌み嫌っている。昔に戻りたくない、そのような感情も受けられる。
マミ「伯爵・・・」
レオ「・・・君らに、プレゼントを上げよう。
   秘宝の一つ、メイジスタッフだ。君くらいの魔力なら、その力を引き出すの
   にさほど時間はかかるまい・・・」
闇の中から、レオニードが一つの杖を取り出す。
その形状に特別なものは感じなかったが、明かにその杖に込められている魔力は 想像を絶する物があった。
マミ「どうして、これを・・・」
レオ「君らに、期待をしているからさ。理由はそれだけだ。
   ・・・いずれ、四魔貴族に会う時が来る。その時は、より多くの真実を
   知る事になる。そう、それこそ、世界がひっくり返るような。
   ・・・だが、今はその時ではない。時が熟するまで、待つのだ・・・」
マミ「四魔貴族?」
レオニードは首を左右に振った。
レオ「それと・・・いずれ、この城の地下に、下りねばならんときが来る。
   その時までに、力を上げておくことだ。今のままでは、到底・・・
   いや、案ずる事はないか・・・」
マミの返事を待たずに、レオニードは闇に消えてしまった。
一人残されたマミは、あっけに取られてついつい愚痴ってしまう。
マミ「一体、ナンだったのよ!」
手に残った杖だけは、本物ではあったが。
07/18/2001