理解のSaGa


ゾズマ「つまり、僕が昔いたリージョンの存在するあの世界も立った一つの
    『世界』にしか過ぎないと言う事か?」
理解しがたい話だった。
何より、彼のプライドが。
妖魔と言う存在は、人間よりも遥かに高尚な知識を身につけ、 より高く遠い視線で物事を判断するはずの立場である。
それが、全く知りえない、理解の範疇を超えているような出来事に遭遇するなど
あってはいけないことなのだ。
ゾズマ「しかし・・・つじつまはあうんだよね・・・」
そう考えると、自分が正確にこの辺の座標把握を出来なかったこととて不思議ではない。 確かに、納得がいく。それに、ここまで文明ばなれしたリージョンの存在など 聞いたことも見たこともなかったのだし。
ミューズ「ええ、恐らくは。」
しかし、ミューズは自分も同様の立場に置かれていると言うのに 全く意に介した様子が無い。そりゃ、ゾズマよりも世界の移動が経験的に 多いからと言って物事はそうすぐに割り切れるものではないのだから。
とすると、目の前のこの女性は非常に太い精神を持っているのかもしれない。
ゾズマ「所で・・・その、君の知り合いで僕に似てるって言う人、名前は
   なんて言うの?」
そういえば、一番の疑問点を未だゾズマはぶつけていなかった。
半ば、予想はついていた答えなのだが・・・
ミューズ「ええ、アセルスさんと言う、お綺麗な方でしたわ。」

大佐「・・・カイ君・・・」
カイ「はい?」
大佐「あの、ミューズと言う少女・・・
   もしかしたら、我々には知りえない事を寄り知っているかもしれない。」
カイ「では・・・」
大佐「いや、少し気にしているだけさ。」
カイ「・・・」
口に出さずとも分かる。
カイは、大佐がミューズに何を期待しているか。
カイ(・・・行方不明のご息女の足取りを、知りたい父心を大佐としての自分
   が表に出すのをためらってるのね・・・)
大佐は、普段は吸わない葉巻を口にくわえ、ぽっ、と火をつけた。
07/13/2001