妖気のSaGa


妖魔の君、オルロワージュは言う。
オルロワ「・・・妖魔には、自分よりも下級の者を魅了する妖力が備わって
    いる・・・?いや、違うな。逆だ。妖力の低いものが、高いものに心を
    奪われる。そう言うものだ・・・」

考えてみたら、自分はもう何度か妖魔よりの姿をクローディアの前にさらしている。 ここ数日も、何度か完全に寄ったわけではないが、 妖力を幾分かは発揮している。かなり高いレベルで。
だが・・・ここまで早く彼女に影響を及ぼそうとは思っていなかった。
自分は、ジーナとの一件でかなりの魅了に関する妖力を抑えるようにしていた。
・・・
考えてみれば、忌まわしい話だ。
自分が、このような人に被害を及ぼさずにはいられない体になってしまったのも、
全ては、あの日の・・・
クロディ「アセルスさん?」
クローディアの声で我に返る。
気が付かないうちに怒りによる力の放出を行っていたのだ。
これでは、クローディアにますます被害が及ぶ。
いや・・・既に、遅いのかもしれない。
クロディ「どうかしたんですか?」
アセルス「いや、何でも無いよ・・・ちょっと、昔のことをね・・・」
自分の年齢は本来なら年下のはずである。
しかし、どう端から見ても、二人の関係は主従関係・・・クローディアが、 アセルスに従っているようにしか見えない。
クロディ「もう、夜も遅いですね・・・
     おやすみなさい、アセルス『様』・・・」

既に、遅すぎたのか。
深夜に、喉が乾く自分を認める。
クローディアは、もう自分の妖力にだいぶかかってしまっている。
寝る前の、あの一言・・・
アセルス「・・・クローディア・・・」
長らく忘れていた感覚がよみがえる。
人の血を啜りたくなる自分。
あの頃の、ジーナの血だと知らずに飲み、酔いしれていた自分を思い出す。
このまま、クローディアの血を吸い尽くししまおうか、そうすれば、彼女も永遠の
命を魔力を手にすることが出きる、そして、このまま・・・
はっ!、と邪悪な衝動に押しつぶされそうになった自分を引き戻す。
アセルス「・・・」
方法は、一つしかない。
自分の妖力は未だ完成されたものではないし、自分の『親』とも呼べる、 あの憎らしさと愛おしさの相反する感情を持たずにいられない者は、こう言っていた。
妖力の影響は、未だ比較的浅いものであれば暫らく離れているうちに薄れるもの
である、と。
する事は、一つだ。
選択の余地は、無かった。
クローディアのため、何より、自分が、人であるため。
07/12/2001