宿命のSaGa


レッド「誰だ!?」
気配の無いはずだった空間から突然声がして、レッドは総毛だった。
振り向くと、そこには一人の武士の姿をした男。
いや、男というよりは・・・
レッド「てめぇ!人間じゃねぇな!?」
必要以上に声を張り上げる自分に、はっきりレッドは気が付いていた。
???「少年よ、わたしがどんな存在であるかは君にとっては差ほど問題では
    ないのだろう?」
レッド「・・・」
金属質な声から、はっきりと分かる。
目の前のは、メカ・・・いや、しかし、その割には抑揚のある渋みの聞いた声をしている。
只の機械、鉄の塊ではない。
???「君は、ブラッククロスのことが知りたいのであろう?」
レッド「!!!」
思わぬ台詞が、そのロボットから吐き出される。
しかし、その言葉はレッドを嘲笑している類のものではなく、 善意を効かせた声、只の一アドバイスをしようという親切心がとれる。
???「ブラッククロスは汚らしい、むごい集団だ。殆どの者が力と正義と
    悪を取り違えている愚かな輩達だ。
    そのような集団と、君はどうやって戦うというのだ?」
ずん、とレッドの心に鉛のような錘が叩きつけられる。
確かに、奴らは正義を振りかざすだけで勝てるような相手ではない。
力も、金も、権力もある。
そんな奴らに、どうやって戦えばいいのか・・・
???「・・・まあ、彼らも、大した存在ではないがな・・・
    この、世界の理に比べれば・・・」
メカから放たれる言葉が、種類を変える。
レッド「・・・どういう事だ?」
???「君は、気が付いていないのか?ブラッククロスは、所詮この世界の
    それもごく一部に権力を伸ばしているに過ぎない。
    だが、世界は広い。
    それを、君は知っているだろう?」
黒いメカはまるで自分の心を見透かしたかのように言葉を並べる。
レッド「・・・てめぇ、何処まで知ってやがる!?」
???「大して知っているわけではない。全ては偶然だ。
    君の理解している範疇と同程度の事しかわたしにも分かりえない。
    このことに関してはね。
    ただ、ブラッククロスについては君はわたしよりも知らないだろう?
    それだけを教えてやろうと思ってな」
悪意は感じない。
メカであるはずなのに、並みの人間よりも気持ちの情緒が読み取れる「こころ」を
持っているメカ。
レッドはいぶかしんだ。
だが、答えは目の前にあるものが全てだ。
???「四天王と言う能無しどもは、それぞれがこの世界に存在している四大種族
   のメカ、人間、モンスター、妖魔で構成されたもの達だ。
   ほとんどがブラッククロスにふさわしいゲスどもだが、力はホンモノだ。
   今のままの君では勝ち目が無い。修行を積む事だな。」
レッド「へっ・・・はっきり言ってくれるぜ・・・」
???「わたしは、君を死なせたくないからな。君とは、宿命を感じるのだ。
    よき、ライバルになれそうだ・・・」
この時、レッドはこのメカの本性を垣間見た。
待っているのだ。自分と対等に戦えるものの存在を。
「対等」に闘える、存在を。
レッド「てめぇがじゃあブラッククロスの話をしたのも・・・っ!?」
ふふっ、とメカは微笑し、答えた。
???「真実は、君の心の中のものだ。
    ・・・わたしと戦うまで、負けるなよ・・・」
ぶぉぉ、と突風が吹いたかと思えば、今まで目の前にいたメカはすっかり姿を
眩ませていた。
レッド「・・・おもしれぇ・・・」
後から後から、沸いてくるのは怒だった。
自分は、コケにされたのだ。
07/08/2001