友人のSaGa


タルミッタにバーバラ一行が到着すると、そこにはまたもや見なれた顔がいた。
バーバラ「シフ!?」
遅れてタルミッタに到着したエレノア一行のうちの、前に共に冒険をした仲間の
一人、シフの姿を見たのだ。
シフ「ああ、バーバラじゃないか!噂をすればなんとやらだね。」
シフは、見なれない一行を連れていた。
ほとんどが女性であったが。
バーバラ「シフのご友人方?」
シフ「友人?いや、旅の連れさ。」
バーバラ「女の人ばっかりなのに?」
シフ「みんないい腕だよ。あたしが5人いるよりよほど強いよ。」
これには少しどころかかなりバーバラも驚いた様子を顕にした。
何しろ、全員シフに置き換えたよりも女性が4人、男性一人のパーティーの
ほうが強いと言うのだ。
バーバラの知る限りでシフより強い人間はこの世に3人といないはずなのに。
シフ「まあ、紹介するよ。ゆっくり、酒でも飲んでさ?」

酒も進んでいる場からこっそり抜け出した影があった。
ネメシスだ。
ネメシス「・・・」
皆から避けるように、酒場から出ていったネメシスを追う影が、もう一つ。
ナタリーだった。
ナタリー「どうしたの?みんな、盛りあがってるのに。」
ネメシスは元気なさそうな表情をして、少し笑って見せた。
ネメシス「私は、ちょっと・・・」
ナタリー「お酒が弱いの?」
ナタリーは差ほど飲んでいないらしく、彼女の息はまだ酒のにおいに犯されていない。
ネメシス「ううん・・・何だか、私、ああいうのに慣れてなくて・・・」
悲しそうに、また笑って見せる。
ネメシスは、ふと考えてみた。
幼い頃はよくディオールと二人で街を駆け回ったものだった。
頼りになるお兄さんお姉さん。
あの頃は、無邪気に友達と楽しく遊んでいた。
なのに、何時からだろう、自分がこうやって悲しい性格になったのは。
ネメシス「私、お友達って今までいなかったの。」
突然、ネメシスはナタリーの顔を見ているうちに堪え切れず言を発した。
ネメシス「同士とか、幼馴染はいたわ。でも、私自身が求めた友達って、
     いないの。」
ナタリー「いっしょに行動しているあの人達は?」
ネメシスは目を瞑り、数かい首を振った。
ネメシス「あの人達は、目的を共にする同士、仲間。
     でも、友達じゃないの。私が望むような、友達じゃないのよ。」
酒は飲んでいなかったのだが、酒気に当てられたか、ネメシスも興奮を見せている。 普段は面識のあまりない人には子のような口調ではなす事は無いはずなのに。
ナタリー「ネメシスさん・・・」
ネメシス「だから、不安なの。私。
     このまま目的が達成されれば、私を必要とする人もいなくなる。
     そうなれば、同士は離れていってしまう。
     手に、何も残らない・・・」
ナタリー「・・・」
そんなことないよ、と言う一言がナタリーにはいえなかった。
それは、彼女自身も同じような悩みに明け暮れていた時期があったから。
この心の痛みは、痛いほど分かる。だけれども、その心に慰めの言葉は無い。
だから・・・
だから、ナタリーはこう言うのだ。
ナタリー「じゃあ、あたしが友達になってあげよっか。」
ネメシス「・・・それは、気休め?」
ナタリー「ううん?だって、あたしは別にネメシスさんの仲間達みたいに目的を
    共有してないし、只単に、ここにいる綺麗ないち女性と友達になりたい
    って思ってるいち女性だから。」
ネメシス「・・・私に、気を使ってるの?」
ナタリー「冗談。あたしはこれでも不器用でさ。歌手なんかやってると我侭
     になっちゃって人の気持ちにまで考えが回らないんだよ。
     だから、あたしは単にここで知り合ったネメシスさんと友達に
     なりたいって思ってるだけ。
     それで十分だと思わない?」
ネメシス「でも・・・」
ナタリー「いいの、あたしは少なくともあなたを友達だと思うからね!」
この時、ふとネメシスはナタリーと視線を交わし、その時に、痛いほどの彼女の
心が伝わってきた。
自分に対する同情じゃない、彼女自身の、心の痛みが。
同時に、彼女自身の、暖かさが。
ネメシス「じゃあ、私も・・・あなたのことを、友達だと思っていいの?」
ナタリーは改心の笑みを返した。
ナタリー「当たり前よ!」
ちょっとネメシスは照れくさそうにして、そして、笑った。
07/07/2001