櫛のSaGa


ルーン集めも、思わぬ強敵の襲来こそあったものの、
ヌサカーンの協力によりなんとか二つ目のルーンを獲得するにいたれた。
新たに仲間に加わったミリアム。そしてスライムのバブリー。
ヌサカン「取り敢えず、ルーンは手に入ったわけだな。」
エレン「うん、ありがとうございます、ヌサカーンさん。
    あなたがいなければきっとあのバケモノに私達じゃ敵いませんでしたから
    ね・・・」
ヌサカン「いや、そうでもないぞ・・・?」
そう言ってレッドの方をちらりと見たヌサカーンの口元には僅かな笑みが漏れて
いた。エレンはこの時のヌサカーンの笑みが何を意味する物かは知りはしなかったが。
ヌサカン「では、私はまた医者の仕事に戻るとしよう。
     ここでは、何かと物入りなのでね・・・」
そして、一向はクーロンから新たな地へと旅だった。

レッド「・・・って言ってもよ・・・」
クーロンから京へと旅立つシップの中で、レッドはひとりごちた。
レッド「どうして京なんだ?」
レッドはその性格上、形式や気品を重んじる京というリージョンに対して苦手意識
を抱いているのだ。
リュート「いや〜〜ああいう品の無い町の後は気品を味わうのもいいんじゃない
     かな〜〜〜」
リュートが例によって歌口調で話すが、その一言は実に的を得ている。
エレン「まあ、あなたには少し気品が必要かもね?」
レッド「何だと?エレン、おめーだって人のこと言えた義理かよ?」
二人の目が交錯する。
バブリー「ぶくぶー」
ミリアム「・・・」
誰も止めようとしない。
エレン「今日と言う今日はあなたのその・・・」
口に叩きこもうとした拳が、途中で空に止まる。
止めたのは、乾いた音だった。
からーん、と何かが下に落ちた音。
エレン「あっ・・・」
それは白い櫛だった。
あの時、人魚の姿をしたネレイド、という物から渡された、あの場所へ戻れる
櫛。
エレン「そういえば・・・」
思い出す、あの時の盟約。
ネレイド「月光の櫛を・・・」
エレン「月光の櫛・・・」
うわ言のように呟いたその単語を、ミリアムの耳は逃さなかった。
ミリアム「ねえ、エレン・・・その月光の櫛って、何処で聞いたの?」
エレン「へ?ミリアム、知ってるの?」
ミリアム「いや、詳しくはあたいも分からないんだけど・・・
     ずっと昔に、どっかの海賊が異世界にまぎれこんで略奪した宝の
     一つに、そんな財宝もあったような話を思い出して・・・」
エレン「・・・」
ミリアム「でも、その櫛はサルーインの封印とともに何処かに跳んでいってしま
     ったらしいね。世界中探し尽くした奴がいるらしいけど、見つからなか
     ったらしいんだ。ジェルトンにあるとか言う話も聞いてたけどね。」
エレン「ジェルトン?」
ミリアム「ああ・・・エレンたちは知らないのか。あたいの前にいた世界にある
     火山島だよ。まあ、いけるなら行って見るのもいいかもね。」
ジェルトン。
この地名が、エレンの胸に忘れかけていた目的を再び点らせた。
エレン「・・・ネレイド・・・まだ、戻れそうに無いわ・・・」
07/07/2001