マミが、目を覚ましたのは一週間たって後のことだった。
マミ「・・・あたし、夢を見ていたんです・・・」 トーマスとサラが、ベッドの上のマミの話しに聞き入る。 マミは心身ともに衰弱していて、まだベッドから立って歩ける状態ではなかった。 サラは話す事すら止めたのだが、マミは聞かなかった。 マミ「昔の夢・・・まだ、あたしの父と幸せに暮らしていた時の話・・・」
父は以前、自分に『秘宝』の一つを預けていた。 そして、それとは別に、父の言っていた言葉。 父「いいか、マミ。神様っていうのはな、決して万能じゃないんだよ。 だから、『秘宝』と言う物を作ったんだ。 世界によってはパオペイなんて言う名前で呼ばれているらしいが・・・ 神々は、自分のできない事を『秘宝』でしようとしたんだ。」
サラ「秘宝・・・?」 トーマス「秘宝・・・?聖王の遺物とは違う物なのか・・・?」 マミ「・・・分からないけど、多分、もしかしたらその中にも秘宝があるかも 知れない可能性はあるけど・・・」 マミは、ふと目を辺りにやった。 マミ「私の持っていた鏡は何処ですか?」 サラ「あ・・・今はここには無いわ。」 マミの目つきが病人のそれから険しい物へと豹変する。 マミ「何処にやったの!?」 あまりの勢いに、二人は少し面食らい、たじろいだ。 トーマスが冷静を装い、答える。 トーマス「ああ、何やら先日君がまだ昏睡状態のときにフルブライト家の人が 来てね・・・何やら家宝に同じような感じのする物らしいので、少し 調べたいと言って貸し出してしまったが・・・」 パァン!、と窓ガラスが割れる。 マミの全身から魔力が膨れ上がり、怒があらわになる。 マミ「その人は何処にいるの!」 魔力の奔流。 炸裂音が空間に木霊する。 サラ「ああ・・・」 トーマス「す、済まなかった!それがそんなに君にとって重要な物とは・・・」 トーマスは、この時ほど自分の行いを後悔した事は無かった。 マミ「何処!?」 マミの右手がトーマスに向けられる。 トーマス「・・・・!」 サラ「あ、案内しますから!どうか魔力を鎮めて下さい・・・!」 ふっ、と突然、マミの体が糸の切れたマリオネットのように力を失い、項垂れる。 恐らく、魔力を疲れた体で必要以上に消費したのだろう。 トーマスの体から、忘れていたかのように突然たきのように汗が噴出す。 トーマス「・・・我々には・・・」 サラ「知らない事が、まだまだあるんですね・・・」 トーマスは、一刻も早くこの娘をフルブライトの元へ届けなくてはいけないのだと 考えた。 彼女の勢いだけではなく、本能的に。 トーマス「サラ、行くぞ。」 サラ「はい・・・」
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