昔なじみのSaGa


エレノア「アンタ、ここで何やってたのよ?」
額に僅かな血管を浮き出させて、エレノアはテーブルを叩いた。
パト「いや、俺の方もいろいろあったんだよ、信じてくれ〜」
あの後、エレノアはとりあえずパトリックをこてんぱんに打ちのめした。
相手がわかれば軽い物である。加えて、彼は昔からエレノアには
頭が上がらなかったのだから。
エレノア「どういういきさつでアンタなんかがこんなでかい国の兵士長
     なんてご大層な職におさまってるのよ。」
パト「まあ、こっちの世界に来てから俺だっていろいろあったんだよ。」
パトラックはエレノアと話す内に、まだ彼女とパーティーを組んで
冒険をしていた頃を思い出して、昔に立ち返っていった。
あの時はそれほど若いとは言えなかったが、それでも今の肉体よりは
数段若い。
パト「・・・俺が、こっちの世界に来てからもう10年以上経つんだよ。
   俺だって、もう60近いんだぜ?」
エレノア「60の割には元気いっぱいじゃないの。」
パト「口の悪さは相変わらずだな・・・それより、どうしてエレノアは
   俺と冒険してた頃と全く変わらない若々しい姿を保ってるんだ?」
エレノア「私はアンタよりも今の事態を正確に把握してるから、
     解答を出すのは簡単。でも、それじゃアンタのその脳味噌が
     ついてこれないだろうからね・・・
     簡単に言うと、今私たちがこうやって存在してる世界は
     時間という概念が希薄なの。まあ、ずれてるっていうのが
     正しいのかも知れないけど。
     とりあえずは、その程度しか言えない。理解できないなら
     忘れて。そんなレベル。」
やはりパトリックは理解できていないようだったが、彼の身体の
細胞は、エレノアと出会ったことにより徐々にその活力を取り戻し
つつあった。
肉体は老いる。が、魂は朽ちることはない。
エレノア「・・・ジジイの方が渋くてかっこいいじゃない・・・」
パト「え?なんか言ったか?」
エレノア「いや?何にも言ってないわよ。」
心の中で、エレノアの男好きは相変わらずだな、と苦笑しているのは、
パトリックの老い故か。
パト「しかし、エレノアなら話は早い。」
唐突に、パトリックが話を持ち出す。
パト「実は、俺はお前達にこの国の殿下にお会いして欲しいと
   思っているのだ。」
エレノア「殿下・・・ああ、街でも話が流れるほどの切れ者で、且つ
     武勇名高い・・・」
パト「ああ。最近、ちょっと陛下も物いりでな・・・お前達なら何とか
   してくれると思うのだが。」
エレノア「ふーん・・・まあ、折角ここであんたと会えたのも
     縁ってヤツね。それに、実力者と会える機会はそんなないから
     ね・・・」
パト「・・・どうせ、顔目当てだろ?」
エレノア「ん?なんか言った?」
パト「いや、何にも?」
地獄耳も相変わらずだな。
パトリックは、つくづく目の前の女性に対して閉口するのだった。
03/10/2001