非礼のSaGa


二年前――

シフ「ここがクリスタルシティか・・・」
シフがアルベルトやアイシャ達と共に冒険する少し前のこと。
クリスタルシティは世界で最も大きい都の一つ。
シフ「しかし、何か匂いがするな・・・」
生まれついてから戦士となるべく育ってきたシフは、戦の匂いを感じる
能力に長け、敏感だった。
シフ「ん?」
そんな中、シフが感じたほんの少しの全く違った匂い。
確かに街中には僅かな戦の匂いが感じられるが、それは微々たる物。
人々の何の変哲もない日常に比べれば、些末で無視できるものだった。
が、それとは一線を画した匂い。
明かな、戦。
シフ「・・・これは・・・」
人間の気配とは少し違う。
これは、モンスター・・・
シフ「ちっ!」
モンスターを倒すことは彼女の生業だ。
意識しなくても、動きはごく自然に、戦闘へと向く。
彼女の足が向かった先は、町はずれの広場だった。
人気は少ない。
シフ「・・・アレか・・・」
巡回の兵士達が数名。
その中に一人人間とは異質の気配を放つ兵士が一人。
アレは、モンスターだ。
兜に隠れた素顔が、ふと歪むのをシフは感じた。
シフ「あぶない!」
叫ぶのが早いか、モンスターが動くのが早いか、兵士の一人が振り返り、
その首が飛ぶ。
シフ「ちっ!」
もう一人の兵士が構えようとするが、あまりの突然の出来事だった
ため、その動きはひどく緩慢で、腰が入ってない。
シフ「くっ!」
シフがモンスターの鋭い爪を辛うじて受け止める。
モンスター「ゲェ!」
身を翻し、モンスターは間合いを取る。
今首を飛ばした兵士や、そうするはずだったもう一人の兵士に比べ、
シフは油断ならない、強敵だと感じたからである。
シフ「あたしはここでこいつを引き留めるから、アンタは他の兵士達を
   呼んでおいで!」
一度では兵士は動かなかったが、再びシフは少々語気を強めて
もう一度言った。
シフ「行ってこいと言ってるだろう!」
兵士は恐怖のためか、無言でうなづきもせずその場から走り去った。
シフ「・・・」
多分、あの兵士は戻ってこないだろう。
目が怯えきっていた。
シフ「この国も、これではな・・・」
ふう、と一つため息をつき、シフは手にした斧と大剣で、モンスターへと
斬りかかっていった。
03/10/2001