当分、マミは寝込んだ。
丸二日経っただろうか。
トーマス「この娘・・・一体、何なのだ?」
サラ「目を覚ましたときに、お話を伺わないと・・・」
トーマス「ああ。神王教団の洗脳波の話は本当なのかどうか・・・」
そのころ、巨人の里では――
ミューズ「やあっ!」
ミューズの威勢のいい声が辺りに木霊する。
あれほど病的だった彼女も、大分戦士としての動きが備わってきているよ
うである。力はないが、その分を補うスピードと鋭さ。
滝のように流れていた青みを帯びた長い黒髪は、肩口で綺麗に切りそろえ
られている。
カタリナ「ミューズ様、精が出ますね。」
ミューズとは対照的に、髪が伸びて肩口で遊ばせているカタリナが、
少しやつれた顔をしてミューズの前に姿を現す。
ミューズ「カタリナさん、どうかなさったのですか?」
カタリナ「いや・・・なんか、私も体を動かしたくなってね。
文献ばかり見ていても私は疲れてしまうのですよ。」
ミューズ「では丁度良かったですわ。私のご相手をして下さらない?」
カタリナ「ええ、では、ミューズ様の上達ブリを拝見しましょうか。」
そして、シフとシャールは。
シフ「ほら、チェックメイトだ。」
シャール「うぉぉ・・・っ!ちょっと、その手は・・・」
シフ「シャール、アンタこれで待った何度目だい?」
シャール「う、うぐぅ・・・」
平和に、チェスを。
とはいえ、ただのチェスをしているわけではない。
ここ巨人の里には、人間の英知とは全く異なる英知が存在し、
中には精神力に直接負担を作用させることもできる術もあるのだ。
二人は、その術中でチェスを行っているのだ。
10時間もやっているだろうか、かれこれ。
シフ「ほらほら、諦めなさいってば。」
シャール「う、っく・・・」
シフ「これであたしの108勝3敗ね」
シャール「まだまだぁ!」
シフ「懲りないヤツだね・・・」
マミや他の連中の抱えている問題など、何処吹く風である。
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