スライムのSaGa


レッド「おー、いてぇ・・・」
ミリアム「しかし、あのへんてこに助けられたって言っても・・・
     あんた、死んでもおかしくない傷だったはずだよ。」
自然洞窟の中に入った一行は、モンスターのうろうろする中を
真っ直ぐに直進していた。
殆どがそれほど獰猛でもなく、強いて言えば徘徊している盗賊達
――ここに眠るという宝を探しに来ている者達が、一番危険だった。
ミリアムはかなりの術の使い手で、傷ついたレッドの手を煩わせる
事など殆どなかった。
リュートも遊んでばかりいるようで、それなりに旅の心得はあるのか、
剣はなかなかに扱えている。
レッド「しっかし、広いぜこれは・・・」
もう15分は経っただろうか、全く分かれ道もなく、ただ直進。
しかし、横幅は広かった。ホールが断続的に続いてるとでも言うべきか、
とにかくただの広い空洞だった。
レッド「自然洞窟って、確か観光名地だったよなぁ・・・結構昔。
    それなのに、こんな右も左もわからねぇ場所あったかなぁ?」
ミリアム「え?ここって観光名所だったの?」
レッド「ああ、ミリアムさんはしらねぇんだっけ。ここは、モンスターが
    頻繁に出るようになる前は観光の名所だったんだよ。
    だから結構整備されてるはずだけど・・・」
空間的には広く安定していたが、足場はよいとは言えなかった。
はっきり断言できることに、ここは無整備。
つまり、自然洞窟の、知られざる入り口・・・
レッド「何にせよ、前に進むしかねーけどな・・・」
その通りだった。

エレン「ん?」
突如、エレンは何故かレッドの声が聞こえた。
ヌサカン「どうした?」
エレン「レッド君が近くにいる気がしたけど・・・気のせいよね。」
ヌサカーンはエレンの呟きを介さなかった。
こういう乙女の呟きには関与しないのが、人情というものだ。
ヌサカン「そろそろ、ルーンのある大きな場所に出る。
     足場が悪くなってくるから気を付けろ。この辺はあまり
     整備が進んでいないからな。
     最も・・・裏口は、全く整備もささってないし、モンスターや
     盗賊は出るし、エレメンタルは頻出するし、それに比べたら
     こっちはまだましだがな。」

そのマシじゃない方を通って三人は直進していた。
真っ直ぐルーンに向かって。
それに気が付いている者は居なかったが。
ミリアム「・・・なんか、だんだん魔力が高まってきてる・・・?」
ルーンの放つ魔力に初めに共感したのはミリアム。
続いてリュート。
リュート「・・・ああ〜〜、なんかボクの歌声に神霊力が灯ったようだよ」
レッドが一番ラストに。
レッド「あ、ホントだ・・・この魔力は・・・ルーンか!?」
レッドはここにルーンがあることを知らなかった。
しかし、ルーンだとすぐに認知できたのは、彼の記憶によるものではない。
ルーンが、彼を呼んだのだ。
そして、レッドには予感があった。
きっと、エレンもこのルーンに惹かれてやってくる。
そんな気が、した。

一方、エレンは。
エレン「・・・あれ?このスライム、どうしたのかしら?」
洞窟の隅で怯えたようにうずくまっているスライムに、エレンは
手を伸ばした。
スライムは最初厭がったが、エレンに敵意がないことに気が付くと、
ぴょん、とエレンに飛び乗った。
思ったよりねばねばべとべとはない。
スライムというのは意外とあっさり感があった。
エレン「あ、あたしに懐いてくれるの?」
ヌサカーンは面倒な顔をしたが、エレンを咎めなかった。
スライムは機嫌良さそうにぶくぶくと泡をだし、ひっついたエレンの腕から
するりと抜け落ち、その後、エレン達に付いてくるようになった。
エレン「可愛いわね・・・そうね、名前を決めてあげようか?」
スライム「ブクブッーー!!」
エレン「そうねぇ・・・泡ばっかり吐いてるから、バブリーちゃんってのは
    どうかな?」
スライムはその名前が気に入ったらしく、一際大きな泡を吐いた。
バブリー「ブクブクブクーーー!」
懐く二人を見て、ヌサカーンは、やれやれ、とため息を付くのだった。
しかし、この二人は、何故スライムがこんなところで怯えていたか
全く考えもしなかった。
その答えが、向こうにあるとは知らず。
02/14/2001