自然洞窟のSaGa


ヌサカン「ここだ。」
ヌサカーンに案内されてきた場所は、裏通りをかなり伝った、
自然に出来た洞窟だった。
エレン「この中に、ルーンがあるの?」
ヌサカーンは答えない。
エレン「じゃあ、とりあえずはいりましょっか。」

そのころ、レッドは裏通りで妙な気配に囚われていた。
レッド「なぁ・・・なんか、おかしくないか?」
リュートは何も考えてない様子で、手に持つリュートを弾いてばかりいる。
ミリアム「・・・あんたも、そう思う?」
ミリアムの方は、レッドと同じく奇妙な感覚に囚われているようだ。
心なしか、鳥肌も立ちはじめている。
レッド「・・・だけど、俺の胸騒ぎは、こっちからするんだ・・・」
いけないと思っても、足は進む。
本能に反した行動だった。本能が、危険を告げても、足は尚向く。
ミリアム「待ってっ!」
急にミリアムが二人を制止する。
ミリアム「モンスター・・・」
暗闇の中に目を凝らすと、何やら、風に誘われて飛んでいるような
何かがみえる。
緑のと、赤いのと・・・
リュート「風が歌う〜♪炎が踊る〜♪」
はっ、とレッドは思い当たったことがある。
父から昔聞いたことがあった。クーロンの自然洞窟の近くには
エレメンタルが済んでいて、滅多に会うことはないが、会ったら
目撃者で、生きてかえったものは殆どいないという。
レッド「もしかして、レアエレメンタル・・・?」
希なエレメンタル。
そう、レッドは確信した。
エレンは、まさか、ここに来てはいなかったのだろうか。
レッドが心配したのは、我が身よりもエレンのことだった。
ミリアム「レッド?」
いつの間にか、身体がかたかたと震えていたらしい。
ミリアムが心配げな目でレッドを見つめる。
レッド「ああ・・・とりあえず、ここは危険だな・・・
    アイツに見つかったら、人間なんてとてもじゃないが生き延び
    られないって話だからな・・・」
ミリアム「怖いの?」
レッド「・・・ああ・・・でも、多分、俺のことよりも・・・」

エレン「あら、意外と綺麗な作りになってるじゃない。
    光る石に囲まれてるみたいで、すてきね。」
ヌサカン「観光に来たんじゃないだろう・・・」
自然洞窟は観光の名所としてその昔は名前を轟かせたことがあったが、
クーロンの裏通りの治安悪化、モンスター増大、エレメンタルの
出現などにより、何時しかここを訪れる者も居なくなっていたのだ。
ヌサカン「さて、そろそろルーンの場所に着くな。」
エレン「うーん・・・」
ヌサカン「どうした?」
エレンはさっきから後ろを振り返ってばかりいる。
誰かが後ろから付いてきているわけではないのに。
誰かの気配がしたら、自分が先に気が付くはずだ――
ヌサカーンはそう思っていた。
エレン「いや、ちょっと連れが今、何してるかなぁなんて思って。」
ヌサカン「今の状態のクーロンの裏通りを案内も無しでここまで
     来る者は居ないだろう。それに、エレメンタルも最近
     頻繁に姿をみせているしな。」
エレン「エレメンタル?」
ヌサカン「そうだ。自然洞窟に済む、ルーンの守護をするもの。
     私は長い時を生き、彼らと交信する術を得た。
     が、普通の人間には、まず無理だろう。」
その話を聞いて、エレンの不安はひときり大きなものになった。
エレン(レッド・・・)
しかし、自分は今はルーンの元へ行かなくてはいけない。
ヌサカーンの案内で。
大丈夫、レッドは大丈夫だ。
エレンは、先を進んだ。

ミリアム「!?」
レッド「!?」
突然、緑のエレメンタルが、急速にスピードを上げてこちらに飛んでくる。
レッド「気づかれたと!?」
身体は俊敏な反応を示し、まだぼけっと歌を唱っているリュートの首を
掴むと、その場から素晴らしい瞬発力で離脱しようとした。
ミリアムもそれに続く。
しかし、向こうの相対速度はこちらを上回っていた。
あっという間に、赤いヤツに先回りされる。
ミリアム「挟まれた・・・!?」
リュート「らら〜〜ピンチ〜〜」
エレメンタル「ギ・・・ギ・・・ニンゲン、ジャマスルナ・・・」
緑のヤツが、淡い光を帯びはじめる。
辺りの空気が徐々に収束し、刃となっていくのを三人は感じた。
レッド「アブねぇ!」
突然放たれたかまいたちを、レッドはミリアムとリュートを庇って
その身に受けた。
ミリアム「レッド!」
そして、赤いヤツの放った強風によって、レッドの傷ついた身体は
その風に耐えられる力もなく、向こうへと飛び流されていった。
リュート「レッド・・・」
リュートも流石に歌うのを止め、レッドの飛ばされた方向をみる。
そして、エレメンタルは第二破を放とうとした。
ミリアムは、死を覚悟した。
02/14/2001