医者のSaGa


とりあえず、エレンは裏通りへと続く階段を下っていった。
ルーファスの言う医者の居場所はすぐに分かった・・・
と言いたいところであったが、実際エレンは探すのに少々手間を
とっていた。
理由は、裏通りという場所を考えればすぐわかるはずである。
治安の悪さ。
中央通りですらろくな治安をしていなかったというのに、裏通りが
整然としているわけもなく。
ゴミダメのような建物の中から一軒の病院を探し出すだけでも手間の
かかるだろう作業なのに、さらにはごろつきどもがうざったいったら
アリはしない。
無論、何人束になってもエレンには煩わしいと思うだけで、大した
障害ではなかったが・・・
しかし、そのうちすぐにわかった。
理由は明確だ。
そこに入り口がちゃんとあったからである。
エレン「ここかしら・・・」
ごめん下さい、と小声で言ってエレンは中へと足を踏み入れた。
中は非常に薄暗く、下手をすると外の方が明るかったかも知れないほど
の不気味な闇に包まれている。
妙に雑然と、しかし、且つ一方では何故か整然とした雰囲気があった。
不思議な場だ・・・
ただごとではない気配をエレンは感じた。
どうせ人気はない。
奥に入り込むのに普通の人は躊躇うものだが、エレンにはそう言う躊躇いが
欠如しているのだろう、迷うことなく暗がりの奥へと歩を進めた。
そのうち、たった一つ、ドアがあることに気が付く。
多分、診察室へと通じているのだろう。
人気はなかったが、かえってエレンにはその方が都合が良かった。
こっそりとドアを開けるような真似はせず、かといって勢いよく開けるわけ
でもなし、ごく普通にドアを開けてエレンは中へとはいる。
確かに人気はない。
中には、ベッドが一つと、椅子に腰掛けている、白い白衣の男・・・
エレン「ん?」
人気はなかったはずだ。
では、この白衣を着た椅子に座っているものは、ルーファスの言っていた
医者の変わり果てた姿なのか・・・
それとも、身代わり人形なのか。
エレンがそろそろと近くに近づくと、不意に椅子が180度回転し、
エレンの方を向いた。
そして・・・
???「さあ、早速手術だ、横に・・・」
言い終える間もなく、エレンの剛拳が呻った・・・

ヌサカン「ひどいではないか。いきなり殴るなど。」
あの後、完全に医者をのばしてしまったエレンは頬を二、三度たたき、
白衣の男を目覚めさせた。
男はヌサカーンと言って、ここで潜りの医者をしてるらしい。
エレン「いや、だって・・・」
ヌサカン「礼儀を知らないお転婆め・・・」
ヌサカーンは容赦ない言葉をエレンに浴びせるが、エレンは言い返せなかった。
ヌサカン「ところで、何のようだ?」
エレン「あの・・・ルーファスって人に、あなたのことを紹介されて・・・
    ルーンの話を伺いたくて来たんですけど。」
ヌサカーンは眉一つ動かさなかった。
ヌサカン「成る程・・・お前の身体からは確かにルーンを微弱ながら
     感じる・・・ルーンに選ばれたか・・・」
自問自答で納得するヌサカーンに、エレンは大声でたきつけた。
エレン「あたしにもわかるように言って下さい!」
またもや眉一つ動かさなかったが、少しは答えたようで、ヌサカーンは
低く「むう」と唸った。
ヌサカン「とりあえずは、私が教えることでないな。」
エレン「そ、そんなことって・・・!?」
エレンはいきり立ったが、ヌサカーンはたしなめた。
ヌサカン「待て。人の話は最後まで聞くものだ。
     ・・・私は直接お前にルーンのことを教えるわけにはいかない。
     しかし、お前はルーンからそのことを教えてもらうことが出来る
     のだ。だから、私はせいぜいルーンの在処を教えるのみ・・・」
端正な顔とは裏腹に不細工な表情を浮かべて言い放つヌサカーンに、
エレンは非常に困惑したが、結局甲斐はあったようだ。
エレン「じゃあ、早速・・・」
ヌサカーン「うむ。案内してやろう。このすぐ近くの、自然洞窟
      と呼ばれる鍾乳洞の奥に、それはある・・・」

そのころ、レッドは・・・
レッド「この野郎!」
喧嘩をしていた内に、何やら面倒なことに巻き込まれそうな雰囲気であった・・・。
11/15/2000