結婚。
はっきり言って、自分は結婚なんてしたくなかった。
それも、好きでもない男と・・・
モニカは雨の窓の景色に想いを馳せた。
いくら愛する兄が決めたこととはいえ、こればかりは譲れなかった。
それに、自分にはもう心に決めた人がいるのに・・・
モニカ「あ、あら・・・」
顔が紅潮するのがわかる。
ドア越しに、その彼の声が聞こえたからである。
ユリアン「・・・モニカ様、食事の時間です。」
モニカ「は、はい。今すぐ参ります!」
高ぶる自分の感情を抑えて、モニカは努めてドアを開けた。
そこにいたのはりりしい少年の均整な顔。
モニカ「ユリアン様・・・」
ユリアン「様、はいりませんといつも言っているでしょう、モニカ様」
モニカ「あ、そうでしたわね、ユリアン。」
彼の顔を見ていると気が遠くなりそうになる。
熱っぽさが、気持ちいい。
ユリアン「さ、モニカ様。行きましょう。」
モニカ「はい・・・」
ミカエルが急に妹の結婚を急ぎはじめたのは、モニカがユリアンに対し
特別な感情を抱いているかも知れないと感づきはじめた頃だった。
いつも連れ添っていた兄妹だ。少しの変化でも、ミカエルには
手に取るようにわかった。
ユリアンなんぞに、自分の妹を渡すわけにはいかない。
ミカエル「・・・まずい酒だ・・・」
しかし、自分自身それがいいことなのか最早わからなくなっていた。
妹の幸せはユリアンが握っているのではないか。
自分のこの気持ちが、妹に対して逆効果になるのではないか・・・
結婚はもう決まってしまった。
期日が迫れば迫るほど、彼の気持ちも焦っていく。
ミカエル「・・・」
もう3日間、寝ていない。
結婚式まで後二日。
多分、ミカエルはそれまで眠られないだろう。
ミカエル「こんな時に、カタリナがいたらな・・・」
自らの失態を償うべく旅に出た侍女のことを思い煩いながら、
彼はまた酒をついだ。
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