共和国のSaGa


七英雄の存在がここの世界で消えてから、早三十年の月日が流れる。
即ち、皇帝がいなくなり。帝国が解体し、共和国となった時から
三十年。
短いようで長いこの三十年間で、徐々に人々は帝国の存在を、そして
麗しき皇帝の存在を忘れていった。
しかし、悲劇は突然訪れた。

風も冷たくなってきた秋の夜長、突然の共和国連合からの脱退を表明
したのは、カンバーランドを初めとした、アバロンに対抗すべく力を持つ
軍事国家ばかりであった。
その引き金となったのは、一人の野心を持つ男だった。
その男の名前は、アポロンと言った。
彼は巧みな話術とたぐいまれなるカリスマ性で人々の心を掌握し、
徐々に世界の情勢を変化させる力を持つものとなった。
そして、ことも在ろうに、その脱退した国々が軍事同盟を組み、
アバロンに宣戦布告をしたのだ。
かつての帝国のころのような軍事力、そして絶対的な
指導者がいないアバロンは、敗戦の色は濃厚だった。
そんな中、人々の心に、かつての英雄の記憶が甦る。
皇帝と言う、絶対的な指導者が。

最終皇帝、彼女の名はミレイユ・エレ・シ・アバロン。
不世出の天才だった彼女は、あらゆる方面に対し、その多彩な才能を
遺憾なく発揮、七英雄との最終決戦に大きく軍事的、政治的に
実績を残し、また世界に共和国連合制を布き、平定する。
だが彼女は自分の存在がこれからの世界には不要と判断、仲間と
共に当てのない旅に出る。
しかし、、十年前、彼女は在ることに気が付いた。
それは、彼女の身体は全盛期の肉体から老いを知らないのだ。
共に戦う仲間は見る間においていく。
しかし、自分はどうだ。体力的にも、知能的にも、それはおろか
外見すらも全くおいることはない。
皇帝はその宿命上普通の人間とは一線を画するほどの長寿であるという。
それを思い出すが、どうも自分は違うようだ。
自分は既にもう四十を超える身なのにも関わらず、二十代前半の
若々しい肉体を、みずみずしい美しさを誇るのは、何かがおかしい。
まるで、自分の中で時が止まってしまったかのようだ。
最長寿の皇帝は、百三十年ほど生きたという。
しかし、それでも自分の計算は合わないのではないか。
このまま行くと、二百歳を越える身体になるとも限らない。
既に、老体で戦い、朽ちていった仲間達。
その中で、自分一人が永遠の若さを誇っているのが、彼女には
耐え難い苦痛だった。
最後の一人が目の前で死んだとき、彼女には絶望という言葉だけが
残った。それが、十年前の話。
当てがあった。
自分が最終皇帝として即位したとき、そう、二十歳の時。
皇帝の記憶は失われずにこの身に刻まれている。
その時に見た女魔術師、オアイーブ。
彼女は、約800年前に皇帝レオンが見た姿と、全く同じ姿を
保っていたのだ。
もしかして、彼女なら自分の身体の何かをわかるかも知れない。
そうして、皇帝ミレイユは、忘れ去られた都へと足を運んだのだった。
04/05/2000