お金のSaGa


あの時、ああしていなかったら・・・
レッドの後悔は募る。
何を果たして後悔していると言えば、こういうことになる。
ごく、単純且つ馬鹿らしい理由にしかすぎなかったが。
昨日、1万クレジット入った財布を拾った。
いつもなら猫ばばするところだったが・・・
今の彼にはそんな人の道を外れた行いは出来ない。
その理由は大変なことであったが、人に語るべき理由ではなかった。
ともあれ、その財布を交番に届けたのだ。
すると・・・
交番の方では持ち主が見つかったら一割の差し分をとらせる、と確かに言った。
案の定、レッドはその一割をゲットした。
しかし・・・
事もあろうに、レッドはそのお金をいらないと言って返してしまった。
それは正義の道に反する・・・そう、思ったからだ。
その時は、それで良いと思った。
だが、ついさっき。
ホンのついさっき。
兼ねてから欲しがってたスニーカーを買おうとしたら、ちょうど1000
クレジット足りなかった。
ちょうどである。
正義の味方といえど、欲しいモノもある。
しかも・・・レッドの目の前で、その最後の一つは無情にも買われてしまった。
それも、レッドが拾った財布の持ち主が、である。
非常に嘆かわしいことであり、悲しいことだったが・・・
他人から見れば、正直者が馬鹿を見る状態である。
そのことを、レッドは悔いていたのだ。
何処に当たっても、何を言ってもむしゃくしゃする。
レッド「こんの・・・やらう!!」
シュライクの町中で彼が思いっきり蹴り飛ばした缶コロは大きく軌道を
描き、そしてその落下点に存在していたのは、人の頭・・・
レッド「あ・・・やばっ・・・」
どうやらその不幸な人は女性だったらしく、金髪が目に映えた。
よく見ると女性ながらになかなかたくましい体をしており・・・
ゆっくりと、その女性はレッドの方に振り向いた。
エレン「痛いわねぇ〜!!」
なんと、その女性はエレン=カーソンその人だった。
今彼女たちはシュライクに来ていて、遺跡を探索しているところだったのだが、
エレンはこっそりと抜け出して、街を観光していた、と言うことだ。
レッド「わわっ!す、すみません!」
エレン「ま、謝ってくれたんならそれで良いけどね。」
レッド「え・・・?」
レッドの予想とは裏腹に、エレンは以外とあっさり許してくれた。
レッドはホッと胸をなで下ろしたが、こういう場合は何かの代償がつくものだ。
エレンはにこっと笑って、
エレン「その代わり、私になんかおごって頂戴。」
レッドは自分の財布の中を確かめながら、ユリアへのプレゼントの分を
確認しつつ、とほほ顔で近くの喫茶店へと入っていった・・・
09/15/1999