出会いのSaGa


わかっていた。
エレンは覚悟していた。
遺跡を荒らしたのはあたし達だ、と。
そう言えばなんかあそこから出るときに声が聞こえた気がする・・・
と、そんなことはどうでもよかった。
現実には、もう目の前にイクストルが着地しようとしている。
観客の殆どは既に逃げ出してしまっていたが・・・まだ根性なのか意地なのか、
はたまた腰が抜けて動けないのか、闘技場の観客席に居座ってる者も居た。
エレン「来る!」
その声が激しい戦闘の引き金となった。
イクストルは8人の誰に向かって攻撃するかを多少悩んだ様子だったが、
面倒なのか、一気にその鋭い爪で横になぎ払った。
それに反応できたのは、アニー、ライザ、エレン、エレノアの四人だけ。
あとの実力ある者達は・・・
みる迄もなかった。
ひどい者は、体をちょうど三等分されていたのだから。
幸いにしてよけた者達は、それを見てぞっとした。
一瞬反応が遅れていたら、自分たちもこうなったのだ・・・
エレン「つぎ!?」
今度は大きな足で踏みつけようとしてきた。
しかし、なめているのかその動作はまだ緩慢で、エレンには十分対抗できた。
手に持つ大振りの斧で、足の爪を切り落とす。
イクストル「ギャアアアアア!!」
結構効いたのか、大きな魔物は大声を出してのたうち回った。
追撃で、エレンはその斧を軸にして空中へ踊り出し、その反動と遠心力を持って
全身のバネをフル稼動させて斧を投げ出した。
エレンはこの技をスカイドライヴと名付けていた。
斧は苦しむ化け物の片方の羽を切り落とすほどの威力を持っていた。
イクストル「ピギャァァァァァァ!!!」
さっきとは全く異なるむしろ悲鳴じみた声でイクストルは絶叫した。
が・・・
その絶叫は、唐突にぴたりとやんだ。
その代わりに怪物が表したのは、怒りの表情と、さっきとはまるで違う、
つぶれるほどの殺気。
いよいよ四人は腹をくくった。
ここからが、本番なのだ。
イクストル「ガァァァァ!!」
明らかに怒りと共に吐き出された叫びは、大きな竜巻を呼んだ。
それと共に、復活する片翼。
エレン「マジに・・・?」
しかしダメージは残っているようだった。
それに、今ので結構な体力を使ったらしい。
エレノア「石のアニマよ!!我らに守りの力を与えたまえ!
     守護を司る金色の獣よ!!我らを守れ!!」
闘技場のリングに手を当てて、エレノアは石のアニマに力を与えた。
すると、金色に光る獣が姿を現し、巨大な竜巻を消し去った。
アニー「すごい・・・なんて術なの・・・」
エレノアが使った術は並の物ではない。
アニマを良く知り、アニマを良く操れ、アニマに深く親しんでいる者でなくては
扱えない代物だった。
それだけに、消耗も大きい。
エレノア「ちぃ・・・!この術を使うとは・・・油断してたわ。
     あの化け物には私たち一人一人が立ち向かっても勝てる相手では
     無いわ!!全員の力を合わせなければ・・・」
乱れた息をも省みず、エレノアは声高らかにそう叫んだ。
どうやら他の三人もそう思ってたらしく、誰が頷くことなく、行動に移った。
口火を切ったのは、アニーだった。
アニー「うぉああああああ!!」
ふっとアニーの姿が消えたかと思うと、次の瞬間にはイクストルの眼前に
迄近づいていた。そして繰り出される、一撃目の突き。
その威力に吹っ飛ぶ異形の化け物に、神速のごときスピードで追いつき、
そして上方に高く突き上げる。
そこでイクストルは体勢を持ち直そうとしたが、その時にはアニーが
先に空中で待ち受けていた。
最後に、落下の加速度と体重の全てを込めた渾身の一撃が、イクストルの
体の中央部に突き刺さる。
地面に墜落した化け物には悲鳴を上げる暇もなかった。
すぐさまさっき自分の翼を切り落とした女が、自分に向かって突進してくる
のを見た。
その女の右手は、光に包まれていた。その光は、エレン自身が練り込んだ
「気」であり、その気でまとわれた拳は、金剛石よりも堅いように
怪物は思った。
更に、それだけでは終わらなかった。
エレンは手にためていた気を、差し込んだ拳から怪物の体内で炸裂させた
のだ!!
そこで、怪物にはほんの少し、悲鳴を上げる余裕があった。
だが、それも長くは続かなかった。
次には、ライザが怪物イクストルの巨体を信じられない力で担ぎ上げ、
振り回し、そしてその勢いでもってまた空中へと投げ出した。
そして、すぐさまライザも跳躍し、フライングDDTに似ている、
だがその威力は段違いの技を繰り出した。
イクストルの体は、先ほどよりも更に異形に、また醜悪になっていた。
エレノア「これで終わりね・・・」
エレノアがそっと冷たくそう言い放つと、イクストルの回りには大きな
魔法陣が描かれていた。
その魔法陣は化け物の動きを封じ込め、そして・・・
エレノア「ボン」
全てを焼き尽くすだろう火炎竜が、怪物の体を焼いた。
怪物にはのたうち回る時間すらなかった。
残ったのは、真っ黒に焼けこげた、最早それが何であったかわからないほどの
物体。
エレノアがつえでこづ突くと、その炭焼きはぼろぼろに崩れ落ち、
やがて無数のソニックバットとなって遙へ飛び去っていった。
勝ったのだ、自分たちは。

それから一夜・・・
アニー「ねえ、ライザ・・・」
ライザ「うん?」
アニー「あのエレンって娘と、エレノアって術士・・・」
ライザ「ああ・・・強かったわね。私たちと同じくらいに・・・
    いや、それ以上に、ね・・・」
アニー「うん・・・それでね、ライザ」
ライザ「それ以上は言われなくてもわかってるわ。じゃあ、行きましょうか。」
アニー「・・・!そうね、行こう!!」
エレノアと、そしてエレン御一行とアニー、ライザの2人はこうして
旅の仲間と相成ったのだ。
09/12/1999