飛び立ちのSaGa


エレノアがステスロスと出会ってから約半月。
彼女はその構造に異常なまでの興味を示していた。
しかし、半月を経て尚、彼女の知り得たことは非常に少なかった。
機械のことならよくわかった。が、それと同時に自分にはなじめないこと
も重々承知した。自分には人よりも優れたアニマを操る能力・・・
それも、事火の才能に関しては誰にも負けないと自負していた。
実際、エレノアの術のおかげで研究はかつて無いほど成果を上げていた。
が、それでも。
わかったのは、何らかのワープ装置があることと、飛行能力の高さ、
人工知能を持っていること、最もそれは現在故障中だが。
他にもエンジンの馬力や推力など細かいところはわかるのだが・・・
肝心の所が全て謎に覆われている。
如何にエレノアといえど、こればかりは手を挙げる以外なかった。
しかし、彼女が最も大きく貢献したことが、これからの世界を変えていく。
それは、どうやらこのステスロスには空間を超えたワープ装置が
あるようだ。何となくだが、この感覚は時空を跳んだあの感覚に
近いものがある。
幸いにして、シンクロ装置はすぐに作ることが出来た。
これにエレノアの時空を跳ぶアニマを合わせれば、当に時空を飛べるのでは、
と思ったのである。が、これは非常に危険な賭だった。
失敗すればエレノアは時空の果てに飲み込まれ、もう助かる望みはない。
しかし、成功すれば大変なことになる。それだけで今まで遠ざけていたことが
一気に可能になるのだ。
クェーサー博士の頭の中にも「論理的証明は済んでいるが、実際に行うには
危険がすぎて実行できない」プランや論理的数式が眠っているのだ。
これでエレノアが成功すれば・・・
エレノア「危険ね・・・」
クェーサー「儂はお前さんに無理はいわん。ただ、これがこれからに大きな影響
      を及ぼす・・・それだけはわかっているだろうなぁ・・・」
ディオ「俺は絶対に反対だぜっ!?」
ネメシス「私もあまり賛同できません」
ボラ「私が行ければ行くのだが・・・」
エレノア「でも私はやってみようと思う。前に言われたの。
     『お前は選ばれたものだ。だから運命は私を生かすだろう』て。
     だから大丈夫。」
エレノアは行く決心を固めていた。
それ以降は、誰もそれを咎めるようなことはしなかった。
ディオールが何かいいたそうだったが、本人もそれがわかっているようだ。
クェーサー「では、行くぞ・・・」
早速、エレノアは行くことにした。
あまり時間が過ぎると、決心が鈍るから。
ディオ「・・・俺は願ってるからな」
ネメシス「死なないで下さい・・・」
ボラ「大丈夫だ、と言い聞かせろ。」
クェーサー「何かあったらそのレーダーで時空転移できる!!
      可能なら強く思い描いた場所に、瞬時にだって移動できる!!
      だから・・・無事に、帰ってきてくれ。」
数日で知り合った人たちとの別れは名残惜しかったが、エレノアは世界の未来のため、
いま、飛び立とうとしていた。


<第一部、終わり>
09/07/1999