氷雪のSaGa


アセルス「雪国かぁ・・・」
ピドナから船出して数日。一行はここユーステルムに到着していた。
北方の玄関と呼ばれ、商業が盛んである。
アセルス「雪なんて久しぶりにみたなぁ。」
カタリナ「どうして?」
アセルス「?どうしてって・・・久しぶりなものは久しぶりじゃない。
     世界中が雪降るわけ無いじゃないか。」
カタリナは年に必ず雪を見ることがあったし、それが当然だと思っていた。
カタリナ「言われてみると・・・確かにジャングルには雪が降らないわね・・・」
ミューズ「お二人とも、何を話し込んでいるのですか?」
アセルス「いやぁ、私が雪見たのは久しぶりだなって話。」
他愛もない会話をして、一行は今晩の宿を探す。
幸いにして、今の時期はちょうど商業と漁業の間の何もない時期なので
探すのは容易だった。
何件か見つけることが出来たが、最終的にはアセルスが
「この宿はきっとご飯がおいしい!!」
と主張した「月と海のめぐみ」と言うおおよそ宿らしくない名前の
宿に泊まることにした。
で、実際の食事のことだったが・・・
アセルス「あ、おかわりあと二つね。」
本当においしかったのだから驚きである。
アセルスの鼻の良さに他は脱帽してしまった。
彼女が妖魔だからとか、そういうのじゃなく・・・
単に、食い意地が張っているだけのようだ。
よく言えば、美食家。
直感的に分かるのだろう・・・
アセルス「ああ、あとこれとこれと・・・」
その日、アセルスは全メニューを制覇した・・・

次の日、アセルスは寝込んでしまった。
要するに、食べ過ぎである。
妖魔は人と同じく食事もする。
が、多少の食事で事は足りるのだ。
しかし、明らかに昨日のアセルスは栄養か摂取とでも言うべきか、食事の
とりすぎと言うべきか・・・
そうして、ダウン。
アセルス「うう・・・私はだめ・・・三人で街見物にでも出てきたら・・・」
と言うことで、シャールはアセルスのお供をするというここで、ミューズと
カタリナは街へと繰り出した。
ユーステルムの街はピドナに比べると天と地の差があるが、一日中
ぷらぷら歩くには足りる街だった。
多少寒くはあったが・・・
ミューズ「良い街ですわね。」
カタリナ「そうですね・・・」
しみじみと感じているのは、この街の良さとは少し違うことだった。
ピドナを出て、旅に出たという実感・・・
それが、2人の感情を支配していた。
ミューズ「これからどうしましょうか・・・」
カタリナ「ミューズ様・・・」
感慨に耽っている2人を引き戻したのは、後ろからする声だった。
???「ちょいと、そこの2人。待ちなよ。」
女の声だったが、その声は低くて、強い。
声を掛けたのは長身で、いかにも戦士と言った風貌の女傭兵だった。
体には歴戦の戦いで生まれた傷が痛々しく残っていた。
カタリナ「?何ですか?」
女戦士「女連れで2人で歩くのは危険だよ。」
カタリナ「心配されるほど私はやわじゃありません!」
女戦士「あんたが柔だろうと無かろうと、そっちのもう一人は強そうには
    全く見えないな。あんたは一人でこの人を守れるのかい?」
カタリナ「その辺のごろまきなら何人束でも相手にもなりませんわ。」
女戦士「へぇ・・・言ってくれるじゃないのさ。
    そこまで自信があるなら、あたいと勝負してみようじゃないのさ!!」
言うが早く、女戦士は背中に隠し持っていた手斧で斬りかかってきた。
カタリナは、それを紙一重でかわす。
女戦士「へえ、やるじゃないの。」
カタリナ「不意打ち・・・!?なら、こっちも!」
手には武器を持ってはいなかったが、カタリナには体術もあったし、いざという
時の術もあった。
女戦士との間合いを一瞬にして縮めて、鋭い蹴り。
女戦士はそれを柄の部分で受け止め、力で跳ね返す。
その反動を利用し、カタリナは抜き手。
そうして数分も戦ったか。
突然女戦士が降参を認めた。
女戦士「やめやめ。あたいの負けよ。こんなに持ったのはあんたが初めてだよ。」
カタリナ「・・・?
女戦士「あんた強いよ。あたいの負け!!そういうこと。」
カタリナ「ええと、じゃあ・・・」
女戦士「あたいはあんたに従うよ。
    付いてこいと言われればついて行くし、もう姿を見せるなと言ったら
    二度と見せない。敗者は勝者の言うことを聞く。
    これが掟。」
ミューズは向こうでしどろもどろしている。
カタリナはわかっていた。
こういう人間は、断っても付いてくることを。
それならば・・・
カタリナ「・・・じゃあ、私たちと一緒に旅をしましょう。
     仲間は多い方がいいわ・・・」
女戦士「ありがとう。恩に着る。あたいの名前はシフってんだ。
    よろしく頼む。」
09/05/1999