鏡のSaGa


女の子「助けてくれてありがとうございました。」
アルベルトは助けた少女と共に、近くにあった行きつけの喫茶に入った。
アル「で・・・どうして襲われたんだい?僕にはただのレイプには見えなかった
   けど・・・?」
ちょっと甘めのアイスコーヒーを啜りながら、アルベルトは少女と話した。
少女はそれとは対照的な濃いブラックのホットを飲みながら、答えた。
女の子「実は・・・これなんです。」
無造作に取り出したモノは、何の変哲もない鏡。
強いて言えば、年代がかっているだけで、アルベルトには取り立てて重要でも
ないモノに感じた。
アル「これが・・・?ただの鏡じゃないか?」
女の子「いいえ。普通の人にはそうみえるだけ。これは、『精霊の鏡』
    と言うらしくて・・・昔、父があたしに残していった『秘宝』
    と言う神々の作った宝物らしいの。」
アル「秘宝・・・?」
そういわれてもアルベルトにはピンとこなかった。
確かに秘宝というモノは存在する。ただし、具体的にどのようなモノが
存在するかは知る由もなかったのである。
それが、今目の前にある、変哲のない鏡、と言われてもわかろうはずもない。
女の子「これは魔力のある人間じゃないと・・・」
アル「僕には魔力が無いというの?」
女の子「ううん、人はみんな魔力を持ってるわ。けど、ある程度以上の強さを
    持つモノじゃないと、これは作用しない。
    例えば、あたしのような。」
アルベルトは少しむすっとした。
要するに、少女の魔力はアルベルトより高くて、アルベルトは少女の魔力
よりも低いと言うことをそのまま言われたようなモノだ。
アルベルトだって、ある程度の術は使える。
それなのに・・・
女の子「あ、怒りました?」
当たり前だ、と思いつつ、アルベルトは応えた。
アル「そうはっきり言わなくても良いじゃないか。」
女の子「すみません・・・人付き合いがなれてないもので。
    でも、あたしは少し、普通の人間とは違いますから・・・」
アル「ふーん。じゃあ、どの辺が?」
馬鹿にしたような口調でアルベルトが女の子に聞く。
しかし女の子の方はあまりそれを気に留めなかったらしく、軽く答えた。
女の子「あたし、エスパーなんです。」
アル「ふーん、エスパーね。それなら・・・
   ん?エスパー?エスパーだって!?」
女の子「はい。だから普通の人間じゃないって言ったでしょう。」
アルベルトは目玉が飛び出るほど吃驚した。
何しろ、エスパーという人種は、既にこの世界には存在していないと言う
事になっていたし、また非常に人間離れした感性や感覚の持ち主だと
言われているからだ。また、そのせいで忌み嫌われて、滅ぼされたらしい。
その気になれば自分の心の深層意識の更に奥深くまで簡単に見破られてしまう。
アルベルトは非常に危険な人種だったと昔、文献で読んだときに思ったの
だが・・・
それが、目の前にいる。
アル「まじかよ・・・」
女の子「吃驚しました?」
アル「そりゃ、僕じゃなくてもするさ。何しろ古の・・・」
女の子「あたしは突然変異なんです。何代遡っても能力者は居ません。
    だからこそかつて無い『力』を持ってるんですけど・・・」
?アルベルトにはそこで一つの疑問が浮かんだ。
アル「なら・・・どうして君は自分の『力』とやらでさっきの男達を
   倒さなかったんだ?」
女の子「あたしの魔力はそんなことに使うモノじゃないです。
    制御は出来ますが、人を傷つけるような真似はしたくない。
    それがどんなに悪人であっても、です。」
アル「・・・」
少女の言ってることは本当のようだ。
少なくとも、人を思いやる気持ちは。
アル「わかった・・・君を信じることにするよ。」
少女の表情は一転して明るくなった。
女の子「ありがとうございます!!」
旅は道連れ、世は情け。
これもいいかな、とアルベルトは流れに身を任せることにした・・・
アル「ところで、君の名前はなんて言うの・・・?」
まだ一つ消えていない疑問が残っていた。
一番根本的な疑問だった。
女の子「あ、まだ自己紹介してませんでしたね・・・
    マミ。マミです。これからもよろしくお願いしますね。」
ともあれ、アルベルトは念願の連れが見つかったのだった。
09/05/1999