血縁のSaGa


ジニー「パパ・・・?」
ジニーは目の前にいる男が自分は父だ、と言ってる事が素直に飲み込めていなかった。
まじまじにみると、母の持っている写真で見た姿と似ている。
似ていると言うより、同じと言った方がいい。
しかし、実際的には・・・
リッチ「・・・」
瞬時に、リッチはまだ気を失っているウィルとコーデリアの2人に目をやった。
自分の父にも、母にも、このことを言って良い物なのか・・・
少し悩んだ結果、リッチにはこに2人には今話すべきじゃない、と考え、
起こすのをやめてジニー達だけに話すことにした。
リッチ「実は・・・」

アルベルトは、実の姉ディアナを探していた。
いや、探しているのとは少し違っていた。
実際は、遠巻きになら何回か見たことがある。
ただ、2人の目が合って、面と向かって話をしたことはない。
声すら掛けられないのだから。
アル「姉さん・・・」
一昔前までただの城主の息子で世間知らずのお坊ちゃんだった自分は、
仲間との旅で一回りもふた回りも大きくなったと思う。
この世界の秩序を守っている四天王・・・水竜、アディリス、タイニッフェザー、
フレイムタイラント。
彼らから依頼を受け、その全てをこなしてきた自分は、体格的にも、
人間的にも大きく成長した。一人で旅だって出来るようになった。
しかし、目的の姉とは、再開という形を未だ果たせずにいることが、
アルベルトの心を苛立たせた。
アル「みんな、どうしているかな・・・」
共に傷つき、戦い合った仲間達はそれぞれの旅に出た。
酷寒の地で生まれ育った、屈強の女戦士シフ。
七つの海を股に掛ける男、ホーク。
ムードメイカーの遊牧民、アイシャ。
盗みの達人、そして逃げ足は天下一品のジャミル。
そして戦う旅芸者、バーバラ。
どれも皆、アルベルトにとってかけがいのないみんなだった。
目的を終え、それぞれの旅に出ようとしたとき、アイシャがアルベルトに
「一緒に行かない?」
と言ったのだが・・・また、アイシャはアルベルトのことを・・・
しかし、アルベルトはそれを断った。
一人で何処まで行けるか試したい、と言って。
はっきり言って、後悔した。
アイシャをアルベルトもまた好いている、と言うことではなかった。
単に、寂しいだけ。
誰か、旅のお供が欲しかった。
一人で戦い、そして傷つく。勝ったときのうれしさも、傷ついたときの痛み
も、分かち合う者は居ない。
アル「ああ・・・これから僕はどうしようか・・・」
メルビルの船着き場でぼーっと海を眺めていると、カモメが低く飛んでいる。
ああ、雨か、と思ったが、思い直すとそれはツバメのことだったので、
そんな自分に苦笑した。
それほどまでに、心身共に疲れ切っていたのだ。
アル「誰か、運命の出会いみたいなものを運んできてくれないかなぁ・・・」
そうそううまい話なんて、世の中には転がってない・・・
そうは思っていたが、願わずにはいられなかった。
しかし、ものは試し。
願ってみることである。
女の子「きゃぁぁぁぁ!!」
悲鳴が聞こえる。アルベルトは即座に反応し、声のする方へと向かった。
女の子「助けてっ!!誰かぁ!!」
まだ少女・・・14か5だろうか、まだ幼さの残る表情で必死に助けを
求めている少女は、数人の巨体の男達に囲まれて連れ去られようとしていた。
栗色の髪、切れ目だがかわいらしい瞳・・・
アルベルトは即座に判断した。この娘は運命の娘だ。
アル「何をしている!?」
考えるよりも速く、体と口は動いた。
あの四天王と対峙したのだ。如何に体が大きいとはいえ、所詮人間。
アルベルトにとって怖くなかった。
大男「何だぁ!?俺達の邪魔をするな!」
アル「その子をどうするつもりだ!?」
大男「おめぇにゃ関係ねぇよ!!」
アル「!!」
すぐさま大男のうちの数人がアルベルトに襲いかかった。
しかし、問題はない。剣を抜くまでもなかった。
アル「こんなので、僕を倒そうなんて100年早いよ!!」
そうして、少し睨み付けただけで、男達はひっ、と情けない声を出し、
逃げていった・・・
アル「何だ、大したことのない・・・」
助けた少女は、じっとこちらを見ている。
アルベルトが微笑み返すと、向こうも微笑んでくれた。
女の子「助けてくれて、ありがとう。
    あなたは信頼できそうな人ね。少し、あたしの話を聞いて下さらない?」
アルベルトにとっては願ったり叶ったりだった。
狙ったとおりの展開・・・アルベルトは、久しぶりに充実、と言う言葉を
心から味わった気がした。
09/04/1999