子孫のSaGa


リッチ「うう・・・」
リッチが頭を上げると、そこは見たことがある風景だった。
ここは確か・・・
記憶の糸をたどると、間もなくしてそれが浮かび上がる。
リッチ「樹海か・・・?エレノアと、初めて一緒にパーティーを組んだ?」
辺りを少し見回してみる。
近くにはウィル、そしてコーデリアが倒れている。まだ気は付いていないらしい。
リッチ「全く・・・親父も、母さんも・・・」
今の自分よりも若い父は、こんなにも精悍で、だけど何処かまだあどけなさを
残していたのか。
そして母は・・・?
リッチ「母さんは、ホントに美人だよ・・・」
しゃがみ込んで二人の顔を眺めてみると、何処かしらやはり自分と似ていた。
当たり前だった。
リッチ「・・・エレノア?」
ふと、リッチは人数が足りないことに気が付く。
エレノアはともかく・・・ナルセス、タイラーの二人までいない。
自分と、父、そして母の三人だけが。
リッチ「はぐれたか・・・ちっ。」
しかし今更こんな事を悔いても始まらないので、リッチはエレノアは大丈夫だ、
と言い聞かせ、忘れることにした。
そして、父と母を起こそうとしたとき、遠くから声が聞こえた。
???「ねぇ、こっちの道は来たことがあるんじゃない?」
???「しらん。私はお前について行ってるだけだ」
???「グスタフって自己主張が足りないとおもうよ〜〜?」
???「おれ、もう帰りてぇ」
男女4人の声が聞こえる。
どうやら樹海で迷ったらしい。
男の方はどうでもよかったが、リッチの病気の虫が疼きだした。
つまり、女の子に声を掛けずに入られないと言う、スケベ根性が。
リッチ「そこに誰か居るのか?」
唐突に、リッチは姿の見えない4人に声を掛ける。
いや、厳密には、2人の女の子に声を掛けたのだが・・・
???「そちらにも誰かいらっしゃいますの?」
女のうちの一人が、応答したようだ。
育ちの良さを感じさせる、丁寧な言葉遣いだ。
リッチはエレノアのことを思い出した。
天と地の違いがある。少し笑いが漏れた。
リッチ「ああ・・・迷ったのか?」
???「うんうん。プルミエールがさっさと先に行っちゃうから道が
    わかんなくなっちゃうのよ〜〜〜」
プル「私が先に進んだって、ジニーだって付いてきてたでしょうが!!」
ジニー「そんなこと無いもーーーん」
どうやら気品のある方がプルミエール、天真爛漫の方がジニーと言うらしい。
野郎の名前はリッチにとってはどうでもよかったのは、言うまでもない。
リッチ「まあまあ。お嬢さん方、俺たちもちょうど迷ってたんだ。
    少し話でもして休まないか?」
リッチがそういうと、4人は安心したらしく、こちらへ向かう足音が聞こえた。
その途中、わずかに姿が見えた。
女はまだガキと言っていい様な年齢の、金髪が美しい少女。
もう一人は美女ではあるが、ややきつめの顔をして、女がてらに鍛え上げられた
体をしている、真紅の髪の女性。
リッチは女に関しては老若女(男はのぞくのは当たり前だが)選ばなかったので
どっちも好みだった。
ふと、そのうちの子供の方と目があった。
すると、リッチは言いようのない不思議な感じを受けた。
何か、その子とは繋がりがあるような・・・
ただの他人とは、思えなかった。
向こうもそう思ったらしい。いや、自分よりも何かを更に感じたようだった。
その目には理解の光がともっている。
また、同時に・・・
四人がリッチの前に姿を現したとき、リッチは一瞬にしてその実力を
見極めた。
・・・強い。
プル「あなたが声の主ですか?」
リッチ「ああ。お前たちが向こうにいた連中のようだな。
    俺はリッチ。で、ここで寝てるのがウィルってのとコーディ
    っていうのの2人さ。」
ジニー「・・・リッチ・・・ウィル・・・コーディ・・・」
金髪の少女は、何やら訝しげにリッチの方を見つめている。
リッチ「なんだい?お嬢ちゃん。」
ジニー「ねえ、あなたの歳って、いくつ?」
突然の質問にリッチは度肝を抜かれたが、努めて冷静にした。
リッチ「まだ20くらいさ。お嬢ちゃんは?」
ジニー「うん・・・あたしはね、15。でも、あたしが生まれるくらいに
    あなたと同じ名前のリッチって人、あたしのパパなんだけど・・・
    死んじゃって、それで少しパパかなぁ、って思ったんだけど・・・
    何かパパに似てるし、ウィルって言うのもコーディって言うのも、
    あたしのおじいちゃんおばあちゃんだし・・・
    でも、あたしのパパがあたしを6歳で生んだって、あるわけないわよね。」
リッチはその瞬間、理解した。
これは、間違いない。自分の娘だ・・・未来の、自分の。
しかし、それを話すべきかどうか・・・?
グスタフ「・・・ファイアブランドが?」
ファイアブランドが、グスタフの持つ炎の剣が静かに、何かに共鳴している。
空間の裂け目がまだ残ってるのだろう・・・
リッチは、エレノアじゃないが、運命というものを悟った気がした。
そして・・・決心した。
リッチ「・・・俺の話すことは、ホントのことだ。
    ジニーちゃんと言ったな。多分、俺は君の父親だ」
08/31/1999