貴族のSaGa


ここはピドナ。この世界(リージョンと言う概念がここには無いため
便宜上そう呼ぶ)では、最も大きな都である。
そこには新市街地、旧市街地の二つがあって、貴族は新、落ちぶれた
階級の者は旧市街地に棲むことになっていた。
また、ここには[魔王殿]と言う昔魔王がいたとされる建物があった。
そこ、ピドナにて。
カタリナ「ミューズ様・・・大丈夫ですか?」
ミューズ「ええ。でもカタリナ、その様って言うのは止めてくれない?」
カタリナ「分かってますよ、ミューズ様。」
ミューズ「また・・・分かってて言ってらっしゃるのね!ひどい方。」
カタリナは元々、ロアーヌと言う王国の国王の側近であったが、ある事件
によって階級を捨て、旅に出たのだ。その目的は、あるものを探すこと。
王家に伝わる[マスカレイド]。それを彼女は奪われたのだ。それが、ここ
ピドナに有るという噂を聞きつけ、ここに来たわけだ。
しかし、いっこうに手がかりが掴めず、元々面識が有ったピドナの元
大商人の家系、クラウディス家の一人娘、ミューズの元で世話になって
いるのだ。彼女もまたある事件によって、父が殺され、家が陥落してしまった
のだった。
実のところ、二人を陥れた者は同一のものだったのだが・・・
カタリナ「シャールはどうしたの?今日は見ないわね。」
ミューズ「シャールでしたら魔王殿に行きましたわ。何だか、風が
     騒いでいるとかいって・・・」
カタリナ「そう・・・。ミッチとゴンはトーマスのところで遊んでるし。
     暇ねえ・・・」
貴族を離れたカタリナには暇のつぶし方を忘れてしまったように思える。
それよりも、旅の楽しさ、戦いの緊張の方が彼女には貴族の生活よりも
よく馴染んだ。
ミューズ「今日は日も良いことですし、貴方も少し外に出たらどうですか。
     私なら大丈夫ですから。」
カタリナ「ホントに良いの?」
ミューズ「ええ。シャールもじき帰ってくるでしょうし。」
カタリナ「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

カタリナが海辺の方に散歩に行くと、浜辺に何かが流れ着いている。
ここには滅多に人は立ち寄らないので、カタリナが見つけたのはラッキー
であった。
カタリナ「何かしら・・・もしかして、人?」
走り寄ってみると、やはりそれは人のカタチをしていた。
カタリナ「まだ・・・生きてる?」
息はあるようだ。しかし、心臓が動いているかと言えば・・・
カタリナ「・・・どう言うこと?この娘は一体・・・??」
恰好は身分の高そうな、高貴な印象を受けさせる。その顔立ちは美しく、
性別を問わず魅力を感じずにはいられない。緑色の髪はあまりに綺麗で、
けして染めてはこんな感じにはならない。しかし、天然の人間にはこんな
髪の人間はいない・・・
カタリナ「あっ・・・!!」
つい、カタリナは手元のナイフを落としてしまった。
それが彼女の皮膚を傷つけた瞬間、カタリナは信じられないものを見た。
カタリナ「紫の・・・血?」
赤い人間の血では無かった。
カタリナは目を疑った。
さっきの痛みで少女は目覚めようとしていた。
カタリナ「あっ・・・」
少女「うっ・・・ここは・・・!!ウェズン!ウェズンはどうした!?」
気を取り戻すとすぐ、彼女はいきり立って右手に持っていた赤い剣を
構えた。
カタリナ「ちょ、ちょっと・・・!」
少女「・・・え?ウェズンは・・・?それに、ここは・・・?」
やっと正気を取り戻したようだ。
カタリナ「ふぅ・・・危なかった。あなた、ここでたおれてたのよ。
     大丈夫なの?」
少女「え?ああ・・・、大丈夫。私はこんなので死なないから。
   あ、助けてくれたんだね、有り難う。私はアセルス。ちょっといろいろ
   訳アリなんだけど・・・」
カタリナ「え、ええ。私はカタリナ。没落貴族よ。」
アセルス「貴族?なんか、私の知ってるのとは違うイメージがあるなあ・・」
     ま、いっか。」
カタリナ「ねえ。一つ聞いて良い?」
アセルス「なに?」
カタリナ「あなた、何物なの?」
05/24/1999